異世界のアフレクションネクロマンサー615
大勢のオーク達に警護された、籠がこちらに来て、
「無事か!!」
籠が目の前で停まると、中からビレーが飛び降りて来る。
この狭い道に対して、送れるだけの兵士を送り、しかもビレーまで迎えに寄こしてくれるのは、少々、大袈裟にも思えたが、
「ビレーさん良かった」
「これは…リザードマンが来たのか!?」
この状況で、歴戦の勇士であるビレーが来てくれるのは、助けに船であった。
ビレーに、ここであった事を話しながら、怪我をした者達を籠に乗せ、
「そうか……怪我人を乗せて陣に戻ったら、早急に、野営の道具と鎧を積んで来てくれ」
「分かりました!!」
ビレーは迷わずに必要な物の手配をし、一度戻る者達も迷わずに返事をすると、来た道を戻る形で籠を走らせて行く。
怪我人を乗せた籠を見送り、増員された者達と一緒に、これからの事を話し、
「それでは一緒に行きますか、アフレクションネクロマンサー様」
「お願いします。ビレーさん」
鎧が届くまでは、ビレーと礼人が前に出るという形になった。
みんなには、赤い布を扱う時に近くに居ると、巻き添えにしてしまうかもしれないと言って、少し距離を置いて貰って二人きりになると、
「ビレーさん達は普段、どうやって凶暴化したリザードマンと戦うのですか?正直、あの凶暴化したリザードマンを止めるには、鎧を着た程度ではどうにもならないかと」
周囲の警戒をしていた時には、聞けなかった事を聞く。
間近で見た凶暴化したリザードマンは凄まじかった。
無理矢理、命を削られる事で、人為的に命を掛けた戦いをさせられる……あまりの苦しさに目を踊らさせて、自分の苦しみを少しでも和らげようと、相手にしがみついて苦しみをぶつける。
あの時の、あの無我夢中な状態だったら、例え爪が割れようとも、指の骨が砕けようとも、鎧を貫通してしがみつき、歯が折れようとも鎧ごと噛み砕いていたのではと思わせる程に危機迫っていた。
「いや、鎧を着れば、凶暴化したリザードマンの爪や牙は防げるぞ」
「そうなのですか……?でしたら、なぜ普段は着ないのですか?数の問題ですか?」
あの危機迫るリザードマンをどうやって防ぐのかと、思考を巡らせていたのに、ビレーはあっけらかんと、そんなのは大した事では無いと言い切られてしまう。




