異世界のアフレクションネクロマンサー608
鉄騎兵の位置が分かるからといって、このような戦場で雑談をして良いのかというと、あまり良くない。
雑談をしていれば礼人の気は紛れてしまい、鉄騎兵の発見が遅れてしまう可能性があり、尖兵として共にいる者達を危険に晒してまう。
気を紛らわせずに、周囲を警戒しないといけないのだが、
「うっ……」
「アフレクションネクロマンサー様!?やはり、ここで休憩しましょう!!」
「そうです!!ここまで誰一人怪我をする事無く来て、進まなければならない所は越えています!!」
「いえ…大丈夫です……」
「でしたら、我々がこれ以上歩く事が出来ません!!休憩を下さい!!」
「籠を呼んで来るんだ!!後、護衛の兵を回すように伝えろ!!」
気を紛らわせながらでないと、礼人は前に進むのが困難になっていた。
(やっぱり、どうしても吸収してしまうか……)
礼人の蝶の羽は、少し赤みを帯びている。
鉄騎兵の怨念を感じる為に、自分の木を周囲に張り巡らしているのだが、その気に紛れて赤い瘴気が礼人の中に入り込んで来る。
もちろん、侵食されないように体内で霊力を形成しているのだが、それでも除去しきれない赤い瘴気が、礼人の体を蝕む。
胸が一回一回上下する度に、肺の中に瘴気が混ざり込み、胸が一回一回膨らむ度に、血液と一緒に細胞に取り込まれていく感覚。
「はぁ…はぁ……」
「アフレクションネクロマンサー様!!横になって下さい!!」
「見張りを我々がします!!休んで下さい!!」
礼人の身を案じて、一緒にいるエルフとオーク達が、手頃な木の根元に座らせてくれる。
(瘴気が……)
瘴気が耳の淵をザラザラとなぞる様に舐める感覚……
「…………!!」
「…………!!」
みんなが、心配をして声を掛けてくれているのは分かるのだが、声が聞こえない。
(ま…ずい……)
瘴気と自分の境界が…………
「何か来る!!」
「アフレクションネクロマンサー様!?」
「大丈夫です!!我々に任せて下さい!!」
「今までのとは違うんです!!」
礼人は、自分の気に触れる何かが、鉄騎兵のモノとは違う事を感じて、飛び跳ねて起き上がる。




