異世界のアフレクションネクロマンサー601
「勝って兜の緒を締めよ」では無いが、気が張り詰めてしまい、過剰に反応しているのもかもしれない。
礼人は特別に用意して貰った水を口に含むが、
(ぬるいな……)
太陽に温められた水に、喉を潤す感覚は無かった。
(贅沢な事を言っているのは分かっているけど…冷たい水が欲しい……)
貴重な水は果実酒と割って、かさ増ししないといけないのに、こうして、水一杯に満たされた水筒を貰えるのは破格の扱いなのは分かっているのだが……この過る不安を取り除きたい気持ちがある限り、満足出来ない。
貴重な水と知りながら、もう一度水筒に口を付ける。
口の中で粘つく不穏という不快感を洗い流そうとしていると、
「アフレクションネクロマンサー様は、あの化け物の事を心配しているのですか?」
リーフは、礼人が感じている不快感を言い当てようとしてくれる。
確かに、あの出来損ないの人魚と再び退治するのは、あまり良い状況とは言えないのだが、
「……あの化け物なら、多分倒せます」
「えっ!!そうなんですか!?」
礼人の中では、あの出来損ないの人魚は、もう敵ではない。
「えぇ、あの化け物が何体こようとも、全て潰してみせます」
それは、当たり前の反応。
この間の出来損ないの人魚との戦いでは一度死んだ。
あのまま、出来損ないの人魚に取り込まれて妖怪化するという寸前で、リーフが意識を繋ぎ止めたからこそ、こうして目覚めて、ここに居られる。
あの時の戦いがあったからこそ、リーフも警戒をしていたのかもしれない。
「でも、どうやってですか?この間はあんなに苦戦したのに……私にもあの化け物の倒し方を教えて下さい!!」
「…………」
リーフにとっての不安の芽は、礼人との一言によって摘み取られ、リーフは生き生きとする。
しかし、礼人はそんな生き生きとするリーフと違い、少し困ったかのように愛想笑いをするので精一杯だった。
(やっちゃったな……)
深く考えずに喋ってしまった「化け物を倒せる」それは真実だが、それが何故なのかを聞かれる事を考え無かった。
あまり言い淀むと、またリーフの中で不安の芽が生える。
何か適当な答えを出そうと、頭の中で考えていると、
『コンコン』
「はい!!」
「アフレクションネクロマンサー様、お休みの所申し訳無いのですが、アルフア様方が来て欲しいと」
「分かりました、すぐに行きます」
渡りに船とはこのこと、リーフの質問に答えないで済む、一番良い助け船が来てくれた。




