異世界のアフレクションネクロマンサー600
あの時の戦いで、出来損ないの人魚を退けて勝ち鬨を上げはしたものの、実際は敗走したのが事実。
結局はボロボロの命からがらの敗走で、あの時に追撃があったのなら多くの兵士が死に、フレン達がいた拠点も陥落させられていたかもしれない。
けれど、そうはならなかった。
順当に考えれば、向こうの戦力も限界で、防衛に徹しているというのが妥当な所。
だとすれば、敵の拠点に近付けば近付く程に猛攻が激しくなるという事にはなる。
(あれはまた出るのか……いや、あんなのは易々(やすやす)と創れるものじゃない)
出来損ないの人魚を創ろとしたら、それこそ礼人クラスの霊能者の力が必須のはず。
その必須クラスの人物はリミィなのだろうが、そのリミィは、あっちの世界で霊体となっている。
あの出来損ないの化け物がいないとなれば、いるのは鉄騎兵と裏切った者達だけ、
(何とでもなるか……)
それならば、今回の拠点奪還作戦は苦にならないはず。
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そうして、一抹の不安を覚えながらも鉄騎兵を始末し、今日中に辿り着かないといけない所に、難無くと辿り着くと早い休息を取り、
「アフレクションネクロマンサー様、何か不安な事でも?」
「うん……敵があまり襲って来ないなって」
「そうですよね……もう少し、激しい戦いになると思っていたので、何だか気が抜けてしまいそうです」
礼人とリーフは、二人で籠の中で休息を取りながら、今の状況に付いてそれとなく話し合っている。
「いつもなら、もっと激しいのですか?」
「はい、死なない鉄騎兵ですから。それこそ敵に見付かっても構わないと、威圧的に横一列に突進して来たり、鉄騎兵を倒したとしても、すぐに鉄騎兵を追撃で出して来て、休ませる時間を与えなかったり……それに昼夜を問わずに常に襲ってきたりと、戦いが始めれば、いつも心を擦り減らされるかのような戦いになります」
「そうですか……だとすると、この待ち伏せして襲って来る状況は?」
「こちらを警戒しているか、鉄騎兵の数が足りないのだと思います」
やはりリーフも、礼人と同じ考えに行き着くのであった。




