異世界のアフレクションネクロマンサー597
けれど、実際のその時に生きて、その時に戦った者達にとっては、地獄のような日々だったに違いない。
「私が言いたいのは、アフレクションネクロマンサー様がいるから楽観視して戦おうというのでは無い。その時代、その時代で苦しんで戦って来た者達の様に、我々も地獄の中で戦う覚悟をして欲しいという事だ……と言っても、その中でもアフレクションネクロマンサー様がいるというのが、希望なのは間違い無いがな」
「……そうだ、アフレクションネクロマンサー様が英雄であり、我々の希望だというのは間違い無い事実なのだからな」
重苦しい話をしたが、アフレクションネクロマンサー様が希望というのは間違いの無い事実。
最後の締めくくりに、アフレクションネクロマンサー様の名前を出す事によって、重く張りつめていた空気は軽くなり、程よい緊張感へと変わる。
そんな程よい緊張感の中で作戦会議を始める。
今回の目標は拠点の奪還、それに黒い液体の回収。
敗走したとはいえ、その際に鉄騎兵を始末して、敵にも大打撃を与えている事。
「なるほどな。だからお前達を案内役として、引っ張り出したという事か……しかも、疲弊している兵士達をもう一度出させてでも、このチャンスを物にしたいんだな本国は」
「そうだ。今回の作戦では私が総指揮を務めるように言われているが、実際、今日来ていきなり、そっちの街の兵士に指示を出すのは現実的ではない。我々はここぞという時に出たい」
「……だとしたら、拠点に入り込むのはアフレクションネクロマンサー様がいる、そっちの仕事だな」
「そっちの兵士達には苦労させる事になるがな」
「気にする事は無い、元から私達が戦争を請け負う期間なんだ」
「助かる…出立は明日の早朝で頼めるか?」
「明日の早朝じゃなくても、今からでも近くまで詰めても構わないが?」
「いや……アフレクションネクロマンサー様がいる事を、流布して欲しい」
「それは…構わないが……アフレクションネクロマンサー様の名を出せばリスクもを伴うが……信頼しているんだな」
「心配する事は無い、彼は我々のアフレクションネクロマンサー様だ」
「そうか…よしっ!!お前達、今日は休息日にする。出立は明朝だと伝えろ……それと、アフレクションネクロマンサー様がいるというのもな」
「はっ!!ただちに!!」
アフレクションネクロマンサー様の名前を出すというリスク、一度でも無様なマネを晒せば、背の時点で信頼を失墜させる事になるが、
「私は君を信じている」
「ご期待に添えてみせます」
礼人を紹介するのは軍の士気を高める為ではない、彼が本当のアフレクションネクロマンサー様だと信じているからこそ、我々には英雄が側にいると伝えたかった。




