異世界のアフレクションネクロマンサー594
もちろんその話は、エルフである彼にちゃんとした実力があればの話なのだが、
「これは…命そのもの……なのですか?」
どうやらその心配はないようだ。
彼は、初めて見る霊力に目を丸くし、マナとは違う力に動揺を覚える。
「えぇ、これは霊力といって、あなたの言う通り命そのものを力にするものだと思って頂ければ」
「そ…そうなのですか……」
「でも、霊力だけなら、エルフの皆さんが扱うマナと同じようなものですが」
「いえ…そんなことは」
真偽を疑い、遠回しとは言え、アフレクションネクロマンサー様だという証拠を見せろと言ったら、本当にその証拠を見せられては、彼もタジタジになってしまう。
「ですが私、マナを扱えるのです」
「マナを扱える……?」
「はい、こんな感じに」
「うぅっ!!!?」
目の前の人物が、本当にアフレクションネクロマンサー様だと信じかけている所で、礼人は、霊力にマナを合わせて力の差を見せつける。
白く光っていた蝶の羽が、白銀に輝いて、漏れ出した力が蝶の鱗粉の様に舞う。
「アフレクションネクロマンサー様だ……!!」
「おとぎ話では無かったのか……!?」
その力は周りのエルフだけでなく、オークにすら感じ取れる。
マナでありながらも異質な力。
こちらに敵意を向けている訳でも無いのに、気圧される……その力を例えるなら、轟々と燃え盛る炎の前に立ち、その熱気で皮膚が焼かれているかのような感覚。
この感覚を味わされては、もう疑いの余地は無い。
先程は、周りのガヤガヤとしていたのを咎めたが、今はもう出来ない……なぜなら、目の前にいるのが、あの英雄のアフレクションネクロマンサー様なのだから。
彼は、本物のアフレクションネクロマンサー様が目の前にいると認めた途端に、どうやって接したら良いのか分からなくなり、喉から言葉が出なくなってしまうが、
「お名前をお伺いしても?」
「あっ…はい……アルフア……アルフアと申します」
礼人が、助け舟を出してくれた事によって、声を出す事が出来るのであった。




