異世界のアフレクションネクロマンサー591
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「フレンさん、久しぶりですね」
「えぇ、本来なら街同士での交流は固く禁じられていますからね」
礼人が願った通りに奇妙な街から離れ、籠に揺られながら辿り着いたのは、ニードゥスが先に派遣すると約束した軍隊が築いた拠点……と言っても、まだ目的地に向かう途中なのでバリケードを築いたり、ねぐらを用意しているのではなく。
自分達の街と合流して、会議をする為の天幕が張られている程度であった。
多くの兵士達は野ざらしの状態で、荒野に座り込むか寝転がったり、思い思いに休憩を取っていた。
その様な状況の中で、天幕に通されたフレン達は、今回一緒に行動する者達と話し合っている。
「まぁ、堅苦しい言葉使いは止めてと……向こうで何があったんだ?」
「あぁ……リザードマンと戦争をする為にも、裏切者達を排除する……というのが、表向きの話かもしれないが、ある物を奪取せよというのが我々の任務だ」
「それは聞いたよ。ある物を奪取せよという任務は、正直、言われた時点でやらないといけないのだから、どうしようも出来ないが「ある物」の中身を知りたい」
礼人は、フレンと、もう一人の街を治めているエルフの男性の会話に聞き耳を立てて、口を挟む事無く様子を見守っていたが、
「それに付いてだが、私からよりも彼から聞かせて貰た方が良い」
「彼?そのフードを被っている人か?」
フレンに声を掛けられる事で、自分も話の中に参加する事になる。
もちろんここで、話の輪に混ざりたくなければ断る事も出来たかもしれないが、礼人はもう自分が、中心人物の一人になっている事に覚悟を決めると、
「初めまして、私はアフレクションネクロマンサーの礼人と言います」
顔をすっぽりと覆っていたフードを後ろに払うと、アフレクションネクロマンサー様の証拠の一つとして扱われる、短い耳を露出させる。
礼人の短い耳。
差別を嫌ったアフレクションネクロマンサー様が、自ら長い耳を切り裂いて落としたという逸話通りの、短い耳。
それを見た向こうの街のエルフやオークは戸惑いながら、小さな声で囁くようにざわつき、
「お前達静かにしろ……フレン、この人は本当にアフレクションネクロマンサー様なのか?」
「保証する。この人はアフレクションネクロマンサー様だ」
指揮官を任されている彼だけは、礼人の真偽の程を疑う。




