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アフレクションネクロマンサー 序章  作者: 歩道 進
黒い海
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黒い海32

周囲に脇目も触れずに逃げ出すという事も正しいが、時には落ち着いて周囲を見渡すことも大切な時もある。


礼人は浮かぼうとするのを止めて、沈んでも良いからと自分の身に何が起きているのか周囲を見渡すが、そこには嗚咽を漏らす黒い海の顔だけ。


周りの黒い海が、現世に帰ろうとしている自分達を邪魔しているのではないのかと思ったが、そんな事は無い。


周囲の黒い海は嗚咽するだけ、大きな鯉は魂を礼人に取られて諦めて帰っていく……だったら何が起きているのか?


原因を早く見付けなければ、三層目まで沈んでしまう。


ギリギリの所まで力を使ってしまっている礼人に、三層目まで行くのはあまり良い事ではない。


原因を探すために時間を使ったが、このままズルズルと引きずり込まれるなら、無我夢中で現世を目指すのに時間を使った方が良いのではと思った時であった。


(嫌だ…離して……)


「離して?」


魂の離してという言葉に反応して周りを見るのではなく、魂の方を見て礼人は絶句する。


礼人が絶句したその先にあったのは、黒い海が経文の間から入り込んで魂の足に絡み付いていたのだ。


今迄で、経文の隙間から何ら前兆も無く入り込まれた事など一度も無く、それだけでも頭の中がおかしくなりそうなのに、


(そんなことが有り得るのか!?)


礼人の白い瞳だからこそ見えたことなのだが、魂の足に絡み付いている黒い海は荒縄のように捻じれながら底へと向かい、その先で大きな鯉が口にくわえていた。


それが大きな鯉の力なのか、黒い海の力なのかは分からなかったが、沈んでいく理由は分かった。


大きな鯉は魂に結び付いている黒い海を食べるのではなく、黒い海を銜えて、自分のテリトリーである黒い海の底へと連れて行こうとしている。


実に賢い考えだ。


大きな鯉は黒い海の底のさらに深い底に行こうと一切問題無い体、それはまさに大きな鯉にだけに許された特権、どんなに優れた霊能者といえど黒い海の濃度が高まる深海に連れ込まれて精神が持ちはしない。

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