異世界のアフレクションネクロマンサー588
「…………」
「アフレクションネクロマンサー様?いかがなさいましたか?」
「いえ……こんな立派な剣を貰ってしまって恐縮してしまって」
礼人は、親方の言葉に固まってしまった「リザードマンだろうが何だろうが、切り裂いてみせます」という言葉に。
今まで礼人がして来たのは、人を守る行為。
命懸けの戦いをして来たのは間違い無いが、それでも、争って相手の命を奪う経験はしていない。
妖怪と戦って来たが、それは狂った命を還し、命ある者を守る為。
親方から貰った剣は、今まで自分がしてきた行為を決別する為の物。
その事を理解した途端に、腰に身に付けた剣が異様に重く感じた。
誰かを守る為の刀を無くして、殺し合う為の剣を手にしたのは、礼人のこれからを暗示しているのかもしれない。
これから自分がする罪の重さ……それを抱き抱える事が出来るかどうかは分からないが、
「この剣に見合うだけの、活躍をしてみせます」
「はい、きっとアフレクションネクロマンサー様のお力になります」
この剣に見合うだけの活躍……その言葉は礼人の胸を締め付けるが、今はこの剣を作ってくれた事に感謝して笑顔で応える。
「アフレクションネクロマンサー様、もうお時間が」
「うん…行こうリーフ」
もう別れを惜しむ時間は無い。
「御武運を!!」
「必ず吉報を届けます!!」
親方から二本のアソリティの剣を受け取り、礼人とリーフは、集合場所へと向かうのであった。
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「行ってらっしゃい!!」
「アフレクションネクロマンサー様!!みんなをお導き下さい!!」
出立を見守る人達からの声援が、街の中に響く。
老若男女関係無しに大人から子供まで、エルフもオークも、ドワーフもサキュバスも一緒になって、みんながみんな精一杯に声援を送ってくれる。
続く争いで貧困になり、続く争いで時間も無かった彼等、彼女等に出来るのは、せめてものの声援だけ。




