異世界のアフレクションネクロマンサー576
それ所か、銃手は地面に座り込むと、爆弾気球が超弩級ドラゴンの胸に吸い込まれるのを見上げる……そう、見守っているのではなく、見上げている。
超弩級ドラゴンの胸に向けて浮かべた爆弾気球が、壊れた心臓から血を絞り出すのは分かっている。
自身の腕前を分かっているのだから、最後まで見ていなくても問題ないのに、それでもそこに残る理由は、この作戦が自分達の死を持って完遂する作戦だから。
何も仲間が、部下が、相棒が死んだからセンチメンタルになっているとか、そういう話では無い。
ここで銃手がいなくなったら、どうなるかという話。
胸を今一度、爆発させられた超弩級は、地上に何かいると地上を見るだろうが、そこに何もいなければ、その時は焦るだろう。
何かがいると、何かが潜んでいて、自分の事を殺そうとしていると思ってしまう。
そうしたら、どうするか?
その答えは簡単に予想が付く、超弩級ドラゴンはその場から、最期の獄炎を街の方へと吐き出す。
そうすれば、街全体と迄はいかないにしろ、焼かれてしまう。
火の着いた家が次々と連鎖して燃え上り、街のいたる所で火災が起きる。
そうなったら、どれだけの被害が出るであろうか?
しかし……もしもここで、誰かいたら?
爆発させられた胸の下に、誰かいたら、超弩級ドラゴンはどうするであろうか。
その答えも簡単に予想が付く。
超弩級ドラゴンの胸の中に飛ばした、爆弾気球が爆発する、熱い血の雨がボトボトと落ちる。
それは超弩級ドラゴンの命を、一気に縮めた事を知らせてくれる血の雨。
銃手は血の雨を浴びながら、自分の役目を果たす。
その場から逃げ出さず、超弩級ドラゴンが首を下げて、自分を見つけるのを待つ。
そうすれば、全てに決着が付く。
胸下に何がいるのか確認する為に、超弩級ドラゴンが首を下げると、目が合う。
最後の最後を飾るのは、老兵でも無く、エースパイロット達でも無く、自分だと笑ってみせる。




