異世界のアフレクションネクロマンサー574
だから、一人で隠れて、だから、たった一つの爆弾気球を隠して待っていた。
木に背中を預け、寝そべって待っていた、遠くから聞こえる爆発音を聞きながら。
遠くから聞こえる爆発音が、みんなが死んで逝く音だと分かっていても、眉一つ動かさずに、穏やかな時間を過ごす。
何故なら、みんなは殺されているのではなく、自分の役目を果たして死んで逝っているから。
何1つ悲しいことは無い、あるのは誇らしさだけ。
死ぬと分かっていても、超弩級ドラゴンに立ち向かう者達の誇り高き
一陣から二陣、三陣と爆発音が聞こえると、木に預けていた背中を上げる。
いよいよが来る。
胸が真っ赤に染まった、超弩級ドラゴンが姿を表すと、遂にメインディッシュが出される。
我が国を誇る、二人のエースパイロットによるアクロバットアタック。
自分達の次を担うはずだった部下が、超低空飛行で地上を疾走する。
まだ離れた所にいると思った次の瞬間には、自分の横を通り過ぎ、自分の横を通り過ぎたと思った次の瞬間には、超弩級ドラゴンの胸が弾ける。
そうしたら次だ。
空を見上げると、宙返りをしている相棒がいる。
相棒がいつも言っていた、これをすると空と大地が1つになった世界が見えると。
相棒が空から大地へと向かって来ると、目が合って二人で笑う。
言葉を交わすことは出来ないが、最期の時を前にして、一緒に笑顔になれたのは幸せな瞬間だった。
相棒が地上を飛んで、超弩級ドラゴンの胸に飛び込むと爆発が起きた。
超弩級ドラゴンの胸から血が溢れる。
これで決着が付くなら、自分は相棒の戦闘機に乗っていた。
死ぬなら一緒だと約束していたから、けれど、その約束を無くしてまで、離れ離れになったのは、超弩級ドラゴンが即死しないと踏んでいたから。
街へと迫って来る超弩級ドラゴン。
それを防ぐには、もう1度胸の奥深くに爆弾を送り込まないといけない。
決死の覚悟というつもりは無い。
いつもと何も変わらない、百発百中の腕前を見せれば良い。
昔の爆弾気球と違って、バーナーがあるお陰で、一人でも膨らませる事が出来る。




