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アフレクションネクロマンサー 序章  作者: 歩道 進
黒い海
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黒い海30

魂の下へと向かう。


それだけの事なのに、大きな鯉と礼人の戦いは既に始まっている。


どちらも真っ直ぐに、互いに相手より速く魂を求めて向かう。


一歩も一掻きも譲らない。


(大丈夫だ…大丈夫なんだ……!!)


進路を譲らない大きな鯉、それは自信の表れか……


礼人がオオスズメバチなら、大きな鯉は人間。


人間が毒針を恐れるように、オオスズメバチもまた人間の質量差は脅威。


互いに武器があり、互いに怯えるものがある。


黒い海を漂う魂を中心に、互いの距離が縮まる。


大きな鯉は生きた人間は食べられない……それを信じて立ち向かうが、クジラのように大きい鯉の口が、眼前一杯に広がると心臓が委縮して力が泡になって口から漏れる。


____このまま行ったらどうなる?


あの大きいな口は魂は食べられても、人間は食べられないで圧し潰してしまうのでは?何か他の方法を考えるべきではないのか?そんな事が頭の中で浮かび上がると力が弱まりそうになったが、


(……っ!!)


迷いが生じた時と同じくして、大きな鯉の口が少し小さくなるのが見えた。


どうやら「このままで良いのだろうか?」そう思ったのは礼人だけでなく大きな鯉も一緒だったようで、小さな人間など質量差で圧し潰してしまえば話は終ったのかもしれないが、目の前の光はあまりにも強く輝き、触れただけでも体が溶けてしまうと恐れた。

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