異世界のアフレクションネクロマンサー566
繰り返される光景。
投石機による爆撃に、超弩級ドラゴンの獄炎。
老兵達の皮膚は焦げて、肉から水分が抜けて炭になり、超弩級ドラゴンの胸が爆発すると鱗が砕ける。
しかし、それで老兵達が降伏するように手を上げて、逃げ出す事も無ければ、超弩級ドラゴンが負け犬のように尻尾を巻いて、逃げる事は無い。
どちらも覚悟の上。
老兵達は、あの世に連れて逝かれるのを受け入れていて、超弩級ドラゴンは、この身が砕けようとも、あの国を潰そうとしている。
どちらも死ぬのを前提として、最期の時まで生きいる。
超弩級ドラゴンが山を越える度に、老兵達が死に、胸が傷付く。
それでも、どちらも後ろに引かない。
多くの老兵達が朽ちた炭になって死に、超弩級ドラゴンの胸も肉が裂けて、テカテカとした赤黒い肉が露出する。
全てが予定調和。
何一つ間違ってない、何一つ違えていない。
山を越えた先に、超弩級ドラゴンが街を見る。
この国の根底となる街。
狂う切っ掛けを創った、全てが詰まった場所。
超弩級ドラゴンは少し息を吸ったが、すぐに吐き出す。
ため息をような息が、景色を歪ませる透明な息になり、木々をパチパチと鳴らしながら焼く。
まだ届かない。
全てを焼き尽くすには、もう少し、前に行かなければならない。
けれど、またあの人間達がいる。
爆発する物をぶつけてくる、皮膚がしわくちゃな人間。
どちらもしつこいと思い、どちらも早く死ねと思っている。
人間にとっても、超弩級ドラゴンにとっても、最後の山を越えると、最後の繰り返しが始まる。
投石機によって爆弾が飛ばされて、超弩級ドラゴンの
肉を裂く。
それに対して、超弩級ドラゴンが空を吸い込んで、獄炎を吐く。
同じ繰り返しだが、ここが繰り返しの切れ目。
最後に残ったのは超弩級ドラゴン。
戦いに志願した老兵達全員は、例外無く終わりを迎えた。
超弩級ドラゴンの胸の裂け目は広がっているが、致命傷には至っていない。




