異世界のアフレクションネクロマンサー565
何一つ変わらない運命だからといって、黙ってそのまま受け入れない、一人でも多くの人間を、道連れにする。
山を握り、山を踏み付け、城のように大きなドラゴンが向かう。
憎き国を滅ぼす為に、あの世に連れて行くために。
後、数日もいらない、今日という日で、あの国に辿り着ける。
口から熱気が溢れる。
体の中で渦巻く、憎悪が暴れたがっている。
手を、足を前に、前へと突き進むと景色が見える。
烏合の衆の塊が、待っていた。
老兵達が雄叫びを上げる。
向きを合わせろと、高さを調整しろと。
投石機に乗せていた、爆弾が飛ばされる。
大量の爆弾が、飛ばされる。
瞬時に、超弩級ドラゴンの胸元に狙い定められて、爆弾がぶつかっていく。
老兵となり、体力が衰え、戦場に向かうのも一苦労となって、隠居した者達。
しかし、その経験は一級品。
長年、培った経験を、後々の若者達に、経験を伝える教本として生きるはずだった者達が、再び戦場に帰って来たのだ。
超弩級ドラゴンが顔を空に向ける。
それは、信じられない程に、正確な攻撃に耐えかねて顔を上げたかのように見えたが、超弩級ドラゴンは空を吸い始める。
空気が、雲が吸われていく。
胸が膨らむ。
それはまるで、深呼吸をしているような仕草。
超弩級ドラゴンの、空を吸う仕草を見た老兵達が笑う。
来るぞと、最期まで戦えと、誰もが超弩級ドラゴンの方を見上げる。
空を吸っていた超弩級ドラゴンが息を止めて、人間がいる大地へと視線を向けると、赤い息を吐く。
全てが真っ赤に染まる。
赤い息が広がって、大地で爆発が起こる。
全てが焼けた。
眼前には、焼けた物があるが、気に留める事は無い。
全てが焼けた時点で、話は終わった。
気に留める事は、痛む胸。
胸を守っていた鱗が、砕けそうになっている……が、また手を動かして、足を動かす。
脅威は去ったのだから、再び前に進み出す。
山を踏み付け、山を握って前に進む。
憎き者達を殺す為に、前へと突き進むと、そこには再び、人間達が待っていた。




