異世界のアフレクションネクロマンサー563
王は目を閉じて息を吸う。
これから自分が言う事がどれだけ、残忍で卑怯な事なのかと理解しながら、それでも王として、言わなければならなかった。
ここであの、超弩級ドラゴンを倒せば人類が勝利する……その為には、まず陸軍でも投石器を使い、
胸に爆弾を集中させてぶつける。
胸の鱗が剝げた所を銃撃を行い、胸から血が溢れ出した所で、確実に心臓を潰す為に、戦闘機による直接の爆撃を行うという。
それは、最初は誰もピンッ来ず、理想のような話だと思った。
確かにそれは、理屈では正しいかもしれないが、やろうとすればかなりの被害が出る。
この作戦に参加した陸軍は間違いなく死ぬ。
しかも、超弩級ドラゴンに接近出来るのが、戦闘機だけというのは分かるが、それでもそんな事が出来るパイロットは二人位しかおらず、たった二機の戦闘機では、心臓を潰せるか怪しい。
その事を王に対してどう言ったものかと、悩んでいると、王が続けて言った言葉で場が完全に冷える。
死ぬ事を覚悟した者を集めろと。
この作戦が死をもって遂行しなければならないのは、誰でも分かる。
土壇場で逃げ出したり、反旗を翻す事の無いように、志願者を集めると。
その言葉に、誰もが息を飲み、もしも、人が集まらなかったらと聞くと、王は手を組んで言う。
あのエンブレムを持つ子達が逝く、そうなれば、付いていく者達が必ずいると言って、息を吐いた。
こうして、超弩級ドラゴンを殺す為の志願者が集められる。
その多くは、年老いた者達で、未来は若い者達の者だといい、死ぬべき時が来たと笑ってくれる。
そんな、老人達の談笑会の中で、若者が三人いる。
一人は、稀代のパイロットとして、一人用の戦闘機を与えられた新世代のエース。
そうして、もう二人は、あの男が残した希望のパイロットと相棒の銃手。
特別なエンブレムを描くことを許された、この若者達だけは、周りがなんと言おうと、死をもって完遂する作戦に、参加表明したのであった。




