夢の中11
礼人としてはそんなに難しいお願いをしたつもりでは無かったのだが、
「…………」
「…………」
大人達は一様に目を合わせたのに、誰一人として言葉を発することなく口を紡ぐ。
それは、それほどまでに恐ろしく深刻な事態に陥ってしまっているのか、それとも形容し難い何かなのか……
大人達のその態度に礼人の心は不安で満たされてしまいそうになると、
「強いて言うなら……ドラゴンですかね?」
考える人のように顎の先に手を当てたアニーが応えた。
考える人のように顎に手をあてがうアニーではあるがその表情は苦悩に満ちているのではなく、
「随分と嬉しそうにしておるのぉアニー」
「えぇ、こんなことは滅多にありませんから楽しまないと」
嬉々としてワクワクしている表情をしている。
そんなアニーにやれやれと、やんちゃな子供を見るような困った顔で見るが、
「そうじゃの……西洋でいう所のドラゴンならば、東洋でいうならば鬼という所かのう……」
自分達が対峙しようとしている相手の力量に付いては異論は無かった。
部隊をまとめ上げる二人の出した答えに、礼人だけでなく大人達全員が身構える。
ドラゴンに匹敵し、鬼に迫る力を持つ敵……正直、礼人は聞いた事を後悔していた。
ドラゴンは住処を隔離することで人との境界を作り、鬼は儀式を通して現世に現れないようにしている。
ここにいる中で、人の生活圏に侵入しようとしたドラゴンと対峙したことがあるのはアニー、現世に現れた鬼を地獄に還したことがあるのは二月、もちろん一人で対応したのではなく仲間達と共に対応したのだが、その戦った二人がそういうのだから間違いない。
この二人以外は誰一人として戦ったことのない伝説の存在、その伝説の存在にこれから挑もうとしているのだ。




