異世界のアフレクションネクロマンサー538
この状況を把握してなお、見捨てずに、男の方から来てくれる。
解決策があるとか、打開策があるとか、そんなのは関係無い。
ただ、側で話を聞いてくれるだけでも、心の曇りが晴れるというもの。
王は、ドラゴンの問題など忘れたかのように浮足立ち、男がいつ来るのかと、遅くなるようなら早馬を出して良いと指示を出す。
重く沈み切った状況での、男が来ると言うのは朗報であり、家臣達も、即座に早馬を手配しようとするが、将軍がそれを止めて、男は昼までにはここに来るとの事。
昼までというと、もう一刻も無い。
それならば、男が来たならそのまま、ここまで通すように言うが、将軍は、男からお願いがある事をことづける。
それは珍しい事、男はこの街にいた時は、生活の上で御願いする事はあったが、わがままを言う事は無かった。
しかし、今回は少し毛色が違う。
今回は、来る前からの願い。
この街に住みたいとか、報酬が欲しいとかでは無いと思う……ドラゴンが関係している事となれば、家臣や将軍のように、指示を出せる立場が欲しいという事であろうか?
前は、男の意見を聞く事無く、無碍にしてしまったから、それを嫌がっての事なのかもしれない。
もし、それが願いというのなら拒否する理由は無い。
男には家臣、将軍とは違う男だけの称号、ドラゴンを討った者に与えられた伝説の称号、ドラゴンスレイヤーの称号を与え、そしてそれに見合った権限を与えるを心に決める。
将軍に、男の言付けが何なのかと問い掛けると、男が来るのを見て欲しいという。
その願いに、王は、その程度の願いかと首を傾げる。
それは出迎えて欲しいという事なのかと聞くと、来るのを見て欲しいという事だと言う。
この言葉の違い、あるにはある。
出迎えてだと、迎えに来いという意味になるが、来るのを見て欲しいなら、迎え入れて欲しいという意味になる。
言葉遊びみたいな話だが、王に対してなら、その良い方も納得は出来る。
家臣達は、この言葉遊びに納得して、迎え入れてあげましょうと、男の願いを聞き入れる。




