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アフレクションネクロマンサー 序章  作者: 歩道 進
黒い海
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黒い海27

放たれた光の矢は、黒い海の中で流れ星のように光の線を一文字に描きながら、一直線に大きな鯉に向かうが、大きな鯉は自分のほうに向かって来る光の矢など一切意に介さず魂の方へと向かう。


クジラのような大きな鯉には、礼人の放った光の矢など小さ過ぎて問題にならない……訳では無い。


霊力とマナが組み合わされた光の矢が刺されば、スズメバチの毒針のようにその身に苦痛を与え、大きな鯉とて怯むことになるのだが、


(……っ学習してる!!)


先に述べた通り、大きな鯉は幽霊や妖怪を産み出す存在ではあるが、この黒い海を還すことが出来る存在でもある。


危険な存在であるのは間違い無いが、この黒い海が現世に溢れないようにするためにも必要な存在でもあり、礼人の判断だけで大きな鯉を駆除する事も傷付けることも許されず、許されているのは脅して追い払う事であった。


その事情を知っているかは別としても、大きな鯉は何度も何度も力を誇示して脅かしてくるだけで、霊力を持った者が自分に対して傷付ける行いは取らないと学習してしまう。


向かってきている光の矢がスズメバチの毒針のように十分に苦しめる力はあったとしても、自分の横をかすめることも無く、光の線を流しながら黒い海の底へと沈んでいくことを分かってしまっていた。


黒い海を駆け抜ける光の矢。


大きな鯉を怯ませるだけの力を持ち合わせているというのに、当てることは叶わず、逆に放たれた矢が大きな鯉に怯えて目を合わせないかのように闇の中へと消えてしまう。


自分に対して危害を加えない__それが確信になった瞬間、大きな鯉は口を開けて闇を見せる。


底の見えない闇、黒い宇宙の中で一際黒いブラックホールのように得体の知れない闇があらわになる。


黒い海に浮かぶ魂は大分、闇に溶かされてしまったが、大きな鯉は極上な餌を見付けたかのように一心不乱に魂へと近付く、魂を食せば、体の中で溶かした闇だけで形成し直すよりも、多くの溶かした闇を形にすることが出来る。


黒い海を還す所に還してあげられる……


「寝仏北百八万之命他種祈願安……我が身を寄り代にし、その力で我らを守り給え!!」


……人の声が聞こえる。


神に祈りを捧げて力を給う言葉が聞こえる……

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