異世界のアフレクションネクロマンサー537
この非常事態に、頭を悩ますのは王。
ドラゴンよりも、国防に力を入れる事を進言した、家臣達を責めるつもりはない。
国防に力を入れなければ、他国からの侵略に耐え切れずに属国になっていた。
そうするしかない状況だった。
男からの進言……無下にするつもりは無かったが、聞く訳にもいかなかった。
国を守る為というのもあったが、もしドラゴン討伐隊を編成しても、少数になってしまう。
それでは無駄に人命を、男を死なせるだけ。
どうしても、変えられない順番だった……だったが、向こうから順番が割り込んで来た。
家臣達は、爆弾気球を用意して、再びドラゴンを討伐しようと提案するが、王は首を横に振る。
ドラゴンは二度三度と苦汁を舐めて、引き下がった。
命を繋げて帰ったという事は、爆弾気球の避け方は覚え、再び人間の前に現れたのは、爆弾気球の対処法を学習してしまったという事。
男がこの場に居たら、同じように首を横に振り、爆弾気球がもう意味を成さないと言っていただろう。
もしあの時、男の進言を聞いて、ドラゴンを討伐していたら、ドラゴンを仕留める事は出来た……我々の国が滅んでも、人間という種は守る事は出来たかもしれない。
人間という種を守る為に、我々の国が亡びる……それは後世に残れば美談になるかもしれないが、今を生きている者達にとっては愚策。
例え、未来で人間という種が全て滅ぶ事になったとしても、今を守る者こそが王なのだ。
王は、自分達が選んだ『今』という選択を後悔しないが、そのまま滅ぼされるつもりは無い。
ドラゴンをどう対処すべきかと悩みながらも、あの男なら、男がいてくれたという気持ちが大きくなっていく。
家臣達と一緒に、出せない答えに苦しんでいると、戦場から帰って来た将軍が、男が街に来ると告げる。
その一言で、王の苦心でクシャクシャになっていた顔が、花開いたかのようにパッと明るくなる。




