異世界のアフレクションネクロマンサー535
兵士が吹き飛んだのを皮切りに、敵も投石機から岩石を飛ばすが、こちらには届いていない。
こちらの攻撃は届くが、敵の攻撃は届かないという状況。
普通に考えれば、これが不利な状況であるのは一目瞭然のはずなのだが、敵軍の士気は高く、やられたらやり返すという気持ちと、届いてはいないのだが、反撃の投石が行われている事実が進軍を後押しする。
敵軍は、堰き止めていた川のを流すように雪崩れ込んで来るが、それはあまりにも無謀。
近付いて接近戦を仕掛ければ、大砲も何も無いが、この状況を見越して、自軍は兵士を倍で配置していて、しかも、こちらの軍は前進はしているものの、牛歩の様に遅く前に進む。
相手の投石が届かない距離を他も保ちつつ、けれど、立ち向かって来ているように、敵に思わせる。
敵軍は全く気付かない。
いつも通りの、いつもの前哨戦だと思って向かって行くが、後方の援護があるのと、無いとのでは、あまりにも話が違い過ぎる。
敵は次々と砲弾の餌食になり、運良く砲弾を避けて突撃した兵士は、兵士の物量差で潰される。
その結果は凄惨なもので、大砲と投石機の飛び交うのが終わった時には、敵軍の前衛隊は、ほぼ壊滅状態になっていた。
ここで敵軍が、この一方的にやられるという異様さを感じて、引き下がるかというと、そうではなく。
一方的にやられてしまった事に、面目が潰されたと立腹して、本隊が前に出る。
この時点で、勝敗は決したと言っても過言ではなかった。
兵力差は歴然、使っている武器の差も歴然。
立ち向かって来るなら、先に散った者達と同じ方法で潰せば良い。
敗者という汚名を被らない為に、突撃して来る敵軍を、自軍が誘う。
このまま、兵士達が言ったように、勝利を掴む所を見させて貰おうと、杞憂に思っていた気持ちを軽くすると、空が叫んだ。
それは、人間の芯から刻まれた恐怖の声。
圧倒的な元強者、この世界の元王様。
民衆の手に没落させられて、見る影も無くなってしまったはずのドラゴンが、空から舞い降りて来る。




