異世界のアフレクションネクロマンサー532
結局、男の気持ちが覆る事は無く。
ドラゴンを追い払ったとして莫大な報奨金と、好きな時に居を構える事を許すという形で、幕を引いた。
村に帰った男は、村のみんなから心配され、街で何があったのかと聞かれると、笑いながら、街を観光させて貰って帰るのが遅くなったと伝え、自分がいない間、迷惑を掛けてしまったと、報奨金を分けた。
それからは、いつもの静かで平凡な日々を過ごしながら、先生のお墓参りに出掛けて、先生の墓前で、男は手を合わせながら、ある事を嘆く
ドラゴンの脅威が無くなったというのに、人はあろかな事をしていると。
人も、物資も、文化も好きなように、好きな時に行き来が出来ようになったのに……戦争が活発化したと。
違う文化を持ちながらも、同じ王という地位を持った者が、他国を奪えと叫び、他国を侵略する為に兵士が武器を持って、せわしく行き来する。
戦火は広がり、人間同士で殺し合う……これが人間の業なのかと嘆く。
男は世捨て人の様に、今まで手にした知識を忘れ、街で過ごした事を忘れて……忘却の日々を過ごしていると、兵士達が訪ねて来た。
その兵士達は、付き人として男に従えた者達。
気心の知れた者達に、忘れたはずの街での思い出が蘇り、兵士達を喜んで迎え入れる。
最初は、最近の何気無い話から始まるが、何故ここにいるのかという話に変わると、雲行きが変わる。
兵士達は、我が国に戦争を仕掛けて来ている国があり、その迎撃に向かっている途中で、その道中に男の住む村があるから、立ち寄ったという。
この時間を設ける為にも、兵士達が貴重な休息の時間を割いているのは、火を見るより明らかで、男は兵士達の想いに心から感謝の念を覚えると、もしかしたら、自分の知識が何か役に立つかもしれないと、忘れていた知識を、記憶の扉から引き出す決意をする。
もちろん兵士達は、男の事を先生と呼ぶほどに慕っていたので、男の申し出を喜んで受けると、男を戦場に連れて行くのであった。




