異世界のアフレクションネクロマンサー530
決して、人間の手では届かないはずの、ドラゴンの聖域に辿り着く気球。
その気球には、人は乗っていないが、火薬と鋭利な刃物が積み込まれている。
ドラゴンが致命的な傷を負うのは、地上に落下して地面に叩き付けられて、自らの骨で内蔵がグチャグチャになる時。
爆弾気球自体には、ドラゴンを殺す力は無いが、ドラゴンの翼膜を傷付けて、地上に落とす力がある。
ドラゴンが飛ぶルートを把握して、いくつもの爆弾気球を飛ばす。
ドラゴン達が闊歩する空に浮かんだ気球が爆発すると、ドラゴンの翼膜を傷付けて……
そこで、さえずりが終わる。
もうその先は、説明する必要は無い。
誰も想像する事も、発想する事の出来なかったドラゴンの殺し方。
皆の頭の中に、ドラゴンを倒す方法が浮かび上がると、異論を挟む者は誰もいない。
異論を挟む者がいないというのは、認めたという事で、王が一人頷いて、裁定が下された。
男が想像した事が現実になる。
多くの爆弾気球が造られて、ドラゴンを落とす。
今までに味わった事の無い攻撃方法に、空を闊歩していたドラゴン達は、次第に空を飛ぶのを止めて、山奥や崖の底に身を隠すようになる。
これにて、人類はドラゴンに打ち勝ち、ドラゴンの恐怖から解放されたと喜んだが、男だけは違った。
男だけは、ドラゴンが身を隠しているのは恐れ、怯えからでは無く、力を蓄えていると訴え、火薬を使った爆弾で追い込むべきだと提言するが、それは認められなった。
スパイによって爆弾気球の情報がもれてしまい、他国も、ドラゴンの脅威が無くなってしまい、これによって、今までドラゴンによって通れなかったルートも通れるようになり、戦争が活発化し始める。
男は、周りからの信頼を勝ち得ていたが、それでも、いつ戦争が起きるのか分からない状況では、提言が通るのは難しく。
王も苦渋の判断で、男の要望を退けた。
これは、決して誰が悪いとかは無い。
ドラゴンの討伐をしているという情報が、他国に流れれば、間違い無く国が襲われる。
王は、戦争が落ち着いたら、必ずドラゴンを討伐すると約束するが、男はそれならばと、村に帰る事を願い出る。




