異世界のアフレクションネクロマンサー528
家臣達は、男に対して我慢ならなくなり、王の気持ちに背く形になろうとも、護衛の兵達に、男を外に放り出せと命を下し、男は言葉を発する間も無く、追い出されそうになったが、そこで付き人達が前に出る。
家臣と、付き人の怒鳴り声が響く
訳の分からぬ者に絆されてと叫べば、身分等、志の元では何も意味を成さないと吼える。
王にとって毒だと吼えれば、心正しき者だと叫ぶ。
怒鳴り声で、殴り合う家臣と付き人に、護衛の兵士達はどうしたら良いのかとオロオロしていると、男がいきなり跪く。
いくら大声で叫びあっているとはいえ、件の者が動けば嫌でも目に付く。
何があったのかと、何をしているのかと、家臣者達と付き人達は怪訝そうにするが、次に続いて護衛の兵士達が、男と同じ方向に向かって跪く。
男も、護衛の兵士達も跪く姿に、両方はそこでハッと気付く、これは男の意表を突いた行動では無いと。
男と、護衛の兵士達が頭を下げた方を向くと、王が右手を小さく上げている。
それは何か決まった合図では無いが、この状況を察すれば、何を言いたいのかは分かり、そして、王の手によって裁量を下された。
王が大声を上げて、その場を治めるのは簡単な事だった。
しかしここで、声を上げずに手を上げたのは、心を見る為。
誰が間違っていて、誰が正しいというのは無い。
誰もが、信念を持って動いている。
だからこそ、黙って手を上げた。
家臣と付き人の信念の衝突は、罵り合うことでエゴになる。
周りが見えなくなり、こちらの意見が正しく、向こうの意見を潰そうとして混沌になり、護衛の兵士達も巻き込まれてしまう。
誰もが誰も、王が見えなくなってしまった状況だが、それでも、男だけは王を見た。
このように荒れてしまった場になっても、自分の事を悪く言う声が聞こえても、取り乱す事無く、みんなを見ていた。
自分が庇ってくれる人だけを贔屓せずに、自分を排除しようとする者も対等に、そして、巻き込まれた者達を庇おうと、みんなを見ていたからこそ、王が見えた。
男は、王が右手を上げた瞬間、心を見ている事に気付くと頭を下げた。




