異世界のアフレクションネクロマンサー526
全ての生き物達が逃げ出して行く中で、男達だけは、生き物達の濁流を掻き分けながら、災厄の地へと向かう。
バタバタと、ドカドカと騒がしい、生き物達の濁流は大地を揺らし、まるで地響きがなっているかのようであったが、それよりも遠くからでも聞こえるドラゴン達の咆哮の方が恐ろしい。
どんなに大地を揺らして、地響きを鳴らしているといっても、それはドラゴンから怯えて逃げている者達の悲鳴。
遠くから聞こえる咆哮は怒りと猛り、ドラゴン同士の本気の殺し合い。
空が震えているのを感じながらも、それでも、災厄の地へと辿り着くと、空から落ちて来た炎が大地で燃えている。
大地に撒き散らされて炎が、点々と燃える。
これだけならまだ、炎の種を避けながら、突き進む事も出来なくも無いが、雲すらも、かき乱す風が大地に吹き荒ぶと、大地に撒き散らされた炎の種が、息吹を上げて炎の草原と化す。
赤い草原は、大地にいた存在全てを燃やし尽くすと枯れてしまうが、その後には荒野しか残さない。
ドラゴンが暴れると、全てが燃やし尽くされてしまう。
全てが燃やし尽くされる光景を見て、付き人達は息を飲んで、体が恐怖で硬直してしまうが、男だけは大声で叫ぶ。
ついに、ドラゴンの死を暴く事が出来ると。
男は空を見上げて、ドラゴンの争いを見ようとしている。
いつ、自分達のいる所が、炎の草原に包まれるかも分からないのに、恐れる事無く、逃げ出す事無く。
その勇猛な姿に、恐怖に包まれて、身動きが取れなくなってしまった、付き人達の心が奮い立たされると、誰もが空を見上げた。
空の上で行われている殺し合い。
その殺し合いは、どれだけ続くのか。
周りに炎の種が落ちて、息吹を上げて炎の草原となり、大地を焼き尽くす。
それが何度も何度も繰り返される。
何度、自分達の側を炎が焼いても、誰も逃げようとせず、誰も目を伏せる事無く、空を見上げ続けると、ついに空から悲鳴が上がる。
争いに敗北をしたドラゴンが、生きたまま悲鳴を上げて、大地へと墜ちる。
それは恨み言を叫んでいるのか、それとも空に帰りたいと叫んでいるのか、察する事は出来なかったが、ドラゴンは生きたまま大地に堕ちると、自分の体に貫かれて死んだ。




