異世界のアフレクションネクロマンサー525
王としては、男の安全の為に、付き人を用意したがっていたが、危険な事に巻き込む事は出来ないと頑なに断る。
事が事だけに、王の願いを断っても誰も何も言わなかったが、本来なら、王の言葉を受けず、返し続けるのは不敬罪として断罪されても、おかしくないのに、男は断り続ける。
自分のやろうとしている事に、他の人達を巻き込まないようにする姿勢に、昼行灯のような存在と思われていた男の評価が変わる。
王にしか見えていなかった、男の芯の強さ。
ドラゴンと聞けば、誰だって震えて怯え、住処や移動ルートの調査任務は、誰もが嫌がるのに、一人で行くと言う。
名誉の為とか、王に付け入る為というには、あまりにも危険過ぎる行為。
その決意が、打算では無いというのは、誰もが感じる事が出来る。
それ故に、男が狂っていると思う者もいたが、男に対して勇敢だと称える者もいて……そして、王と同じように男に興味を持って、話し掛ける者達もいた。
最初の頃は、王の飼っている小鳥位に思われていたが、男と話をした者達は、たちまち魅了されていく。
穢れ無き信念、清き魂……男の純粋さに魅了された者達は、自分達も、ドラゴンの死ぬ瞬間を見るのを手伝いたいと、懇願する程になっていた。
今までは、男が断っていたのもそうだが、ドラゴンの調査をみんな嫌がっていたから、付き人の話は難航していたが、立候補をする者が出て来てしまっては、話はそうもいかなくなった。
一緒に付いて来てくれるという人達は、断られても勝手に付いて行くと言い、王は、こうなっては一緒に行かなければ危険だという。
結局、男は付き人を付けるという話に折れて、調査隊を編成し、ドラゴンの縄張り争いが起きたという一報を受けると、すぐ様に旅立った。
早馬に乗り、一昼夜で大地を駆けて行く中で、様々な動物達とすれ違う。
シカやウサギ等の草食動物だけでなく、肉食獣の狼や熊すらも、爬虫類も昆虫も、脇目も振らずに逃げ出して行く。
それが意味するのは、全ての種の頂点であるドラゴンが、災厄を撒き散らしているという事。
ドラゴンが暴れるだけで、命の危機が訪れる事を分かっているから、種族関係無しに逃げ出して行く。




