異世界のアフレクションネクロマンサー523
話は終わった。
これ以上、話す事は何も無い。
こちらの都合で、遠くからはるばる来た男を労えば、それで話は終わる。
気の利いた言葉を投げれば、この男も納得して帰る…この男はそういうの理解出来る……片田舎の村に住む男が、そう言うのを理解して……
そこで王は、この男に心惹かれている事に気付く。
決して、村に住んでいる者を馬鹿にしているのではない。
しかし、現実がある。
教養を受ける事無く育てば、どうしても、抜けきれない野暮ったい雰囲気がある。
けれど、この男からにはそれを感じられない……感じられない所か、洗練さ……研ぎ澄まされた、年老いた歴戦の者の雰囲気すら感じている。
理屈では無い、感覚。
男を帰す…元居た所に……それだけで良かったのに、王は男を呼び止めてしまった。
そんなに急いで帰る事も無いと。
男は最初、自分の村に帰りたくて誘いを断り、家臣達も、それに同意して、帰すべきだと言うが、王はそれを認めず、一方的に話を決めてしまう。
客人を一人泊める。
この程度の話では、家臣達も無理矢理に止めさせる事も出来ず、押し切られる形で、男もしばらく街に留まる事になってしまう。
男は、滞在するならばと街を散策してみると、目新しい物が確かに沢山あった。
村とは違う、文化が行き渡った素晴らしい町。
規律が存在し、教養が育まれ、子供ですら大人顔負けの礼節をわきまえている。
男は色んな物を見て、知って、時折会いに来る王の話し相手をする。
まるで飼われた文鳥の様に、変り映えの無い日々が続き、そろそろ帰るべきかと思っていた所に、ある話が耳に入る。
近くでドラゴンが徘徊しているせいで、物資の行き来が出来ないと。
街には蓄えがあるから、今すぐに街が困窮する事は無いが、どうにかしなければと話が上がる。
一時的に他の町から徴収を引き上げる、迂回する道を新たに造る……色んな方法を話されていく中で、どうしても避けては通れない話、ドラゴンをどうにか始末出来ないかという、話が持ち上がる。




