異世界のアフレクションネクロマンサー521
先生と呼ばれる男は、知識の宝庫。
あれ程一生の願いと、死ぬまでには一冊の本を持ちたいと思っていたのに、先生と出会ってからは、夢が変わる。
本には知識が載せられている、本には書いた人の人格が詰め込まれている。
本というのは、紙にただインクを垂らした物では無い、その人の英知が詰め込まれている。
本は、人の知らない事を形にして、知を他の人に分け与える。
それはまさに賢者。
本は、成長が止まり、塞ぎ込まれた者に、今一度可能性を与える。
だから本に憧れを抱き、本を欲しいと願った。
だが、先生と出会って、その願いは変わる。
だって先生は、本を書ける人……本そのものなのだ。
今なら分かる、本を通して賢者に恋していたのだ。
賢者に恋焦がれて…でも手の届かない存在、せめてものの繋がりが本だけ。
一生を掛けようが、死ぬまでの願いにしようが、本よりも決して届かない存在。
なのに、側には先生がいる。
先生の側で、先生の言葉を聞いて、先生の温かさを感じて……村の片隅で生きては、本来なら味わえない幸福。
夢は変わる。
先生と一緒に、これからもずっと側で生きていきたいと。
先生の側で、先生と共に過ごす中で、一つの物を造る計画が立つ。
それは、鋼鉄の鳥の子供達を産む事。
この時、先生は重い病に掛かり、残された時間は少なかった。
ドラゴンスレイヤーとして、ドラゴンを滅ぼす前に、道半ばで死んでしまうのは明白で、先生は男に、鋼鉄の鳥の子供の産み方を教える。
残された時間の中で男は、周りの人達に協力をして貰いながら、先生が死ぬ前に、木の鳥をこの世に生み出した。
それは、鋼鉄の鳥程の力を持っていなかったが、それでも人を大空へと羽ばたかせる力を持っており、男が、人の力になってくれる鳥を生み出せるようになった事に満足して、先生は亡くなった。
先生は満足して亡くなったが、男は先生の消失に耐え切れずに、村の中で、子供のドラゴンの亡骸を細々と売って、生き続けたが、一度変わった運命は、男をそのまま、静かに終わらせる事はしなかった。




