異世界のアフレクションネクロマンサー520
ドラゴンとは違う、咆哮が空に響く。
ドラゴンしか咆哮する事が出来ない空で、何かが、ドラゴンに恐れずに吼える。
それは力を示している。
ドラゴンと同じ……それ以上の力を持つ存在だと。
空に響いた咆哮が静かに消えていくと、子が食事するのを、空から見守っていた親が、地上に墜ちた。
地上に墜ちたドラゴンは、体が砕けて、赤い命を吹き出し命を散らす。
食事をしていた、ほんの少しの間に親を亡くした子供達が、悲痛な叫び声を上げるが、ドラゴンを狩った何かは、同情をしない。
ドラゴンが、全ての生き物達にして来たように、弱者は糧になるという掟を押し付けて来たように、二体の子供のドラゴンを食い破る。
全てを支配して来た、ドラゴンの死。
何かが、運命を塗り替えた。
ドラゴンによって、変らない日々が塗り変えられて、終わっていく日になったはずなのに、生きている。
終焉を迎えるはずだった日が、空から、降りて来る何かによって、書き換えられた。
ドラゴンの創り出した運命を書き換えたのは、鋼鉄の鳥。
風を身に纏い、地上に降り立つ、鋼鉄の鳥。
地上が風で吹きすさぶ。
近付けない。
それは見ただけで分かる、この世のモノでは無い存在。
存在するだけで、その場を支配するその様に、まるで、ドラゴンのように気圧されるが、それと同時に、均等で、無駄の無い姿に見惚れてしまう。
目の前にいる何かが、神の遣いなのか、悪魔の手先なのか分からず、ただ見惚れる事しか出来なかったが、鋼鉄の鳥の中から一人の、人間が降りて来た。
嘘のような話かもしれないが、ドラゴンを始末した鋼鉄の鳥は、降りて来た人の翼であった。
その人は、ドラゴンに全てを奪われて、ドラゴンスレイヤーとなった人。
ドラゴンを討つ為に、ドラゴンに復讐する為に、旅をしていた人。
ドラゴンスレイヤーと出会った男は、その人を先生と呼び、変わるはずの無かった日々を塗り変えていく事になる。




