異世界のアフレクションネクロマンサー519
とある村の片田舎に住む大人が、街に憧れを抱きながら、日々を過ごす毎日。
生まれが人の生き方を決める時代で、大人まで育ってしまえば、彼はもう生き方を変えられない。
村の中で仕事をして、町を通して、街を発展させる。
その現実を分かっていて、受け入れて生きる中で、一つの願いがあった。
それは、本を一冊……中古の本では無く、新品の本を一つ、死ぬまでに手にしたいと願っていた。
とてもとても高価な物で、村に住む者が手にするのは、夢のまた夢の話であったが、それでも人生の夢として、生きる目標として、胸の中で希望として生きる。
変わらない日々、変えられない日々、変り映えのしない日々の中で、異変が起きる。
決して触れてはならぬ存在、こちらから触れようとも思わない存在。
それは厄災が具現化した存在。
いかなる生物を喰らう事を許され、いかなる場所でも生きる事を許された存在。
変わらぬが、平穏であった時間が激変する。
三体のドラゴンが、空から降りて来る、お腹を空かせた子供達を連れて。
戦う術等無い村なんて、ただの餌場。
子供と言ってもドラゴン。
狼よりも、熊よりも恐ろしい存在。
地上に降り立った時から、食事が始まる。
人の悲鳴と、骨の砕ける音が、変らない平穏な時が終わった事を告げる。
終焉の中で、鍬を鎌を持って抵抗しようとするが、振るう事無く捕食されていく。
空から降った厄災に成す術も無く、自分が殺される順番を待たされる。
希望も何も無く、滅びるまでの僅かな時間を生きる中、ほんの少しの夢が、欲とも言えぬ希望が消えていく事に、絶望と悲しみを覚えながら、死が来るの待たされていた。
変わってしまった日、変えられてしまった日。
成す術も無く、変化の濁流の中に沈み込んでいくと、空が鳴いた。
聞いた事の無い声。
空を見上げて、その声の主を探すが、どこにもいなくて……でも、幻聴では無い。
確かに聞こえる声、何の声なのかと不思議に思っていると、次の瞬間、空を殴るような咆哮が響いた。




