異世界のアフレクションネクロマンサー517
殺し合い、潰し合い、骸を築き上げて疲弊していく二つの命。
どちらにも希望は無く、手のひらの上で、のたうち回って苦しんでいるのを、エルフは、ほくそ笑んで喜び、最後の決着が付いた所で、手のひらを握って、生き残った方を潰すのを想像していたのだろう。
しかし、未来は変わる。
人間の…あいつの想像する力が未来を変えた。
あいつが最期の瞬間まで戦いきる方法を想像したからこそ、俺達は神の世界に行き、あいつは神の世界すらも越えて……
「想像する強さは…創造する力か……」
「想像……?」
「創造……?」
「あぁ…想像に創造だ……」
死んで終わるはずだった俺の未来から、新たな未来を創造してくれた。
「それでだ……」
少し物思いをして、話を逸らしてしまいそうになったが、気を引き締め直して、説得を続けようとしたが、
『『『…………………』』』
「時間切れか……」
「時間切れ?」
「残念だがな……」
人間の耳では聞こえないが、幾重もの大地を蹴る音が、ドラゴンの耳には聞こえる。
もう時間切れ。
もう少しも、ここに留まることは出来無い。
なのに、気持ちはこの子達と話を……
(話を…したい?)
話をしたいと思っている。
「…………」
「どうしました?」
「なんだよ、人の顔をジロジロ見て?」
「……なんだろうな?」
二人の顔を、名残惜しそうに見ている自分がいる。
(そうだな…楽しいもんな……)
自分の感情を伝え、相手の感情を聞き……言葉を交わす事を楽しんでいる。
(これも…お前が教えてくれた事だったな)
死の淵で、あいつはずっと笑って聞いてくれて、言葉を発しなくても、笑って語り掛けてくれていた。
もう少しの時、話を願えば……
(…それは駄目だな)
時間を作ろうと思えば作れる。
こちらに迫り来る兵士達を気絶させる等、造作も無い事。
目の前の子達を攫って、他の所で話す事も出来るが……
「あっ……」
「……良いのかよ」
彼等の肩から手を離す……間違っても、この二人を裏の世界に連れ込まないように。




