異世界のアフレクションネクロマンサー513
「お前は…何と争うつもりなんだ」
ここで初めて、気の強そうな少年が耳を傾ける。
まだ、目が吊り上がっている所を見ると、信頼されている訳ではなさそうだが、自分達の知らない所で迫り来る存在が、気掛かりになり始めたのだろう。
「そうだな…まずは君が気にした、この世界を襲おうとしている『何か』を話そう」
こうして、二人の少年に話をしていく。
この世界に迫る危機、ドラゴンの存在していた理由、ドラゴンと人間の宿命を越える、呪縛から逃れる為の戦い……そして、
「先生……」
「先生らしいと言えば、そうだけどよ……」
二人は先生の事に付いては、困り果てた顔をしているが、それもそのはずだ。
そもそもの話、俺は、彼等の呼ぶ『先生』とは戦っていない。
あいつから感じた『人間』は、間違い無く『先生』と呼ぶ人物がベースになっていたが、それでも別人物と言った方が正しい。
「君達にとっては、納得しにくい話かもしれないが……いや、私が殺したと言っても過言では無いな」
「…………」
「…………」
あの時の『人間』はすでに『先生』では無い。
命を繋げて、新たな命を生み出したのだ。
心無い言い方をすれば、その時点で『先生』は欠片となってしまっていて、俺の存在が、欠片にさせる切っ掛けになったと言われたらそうだが、間接的に死なせたのだから、直接殺した訳でも無いとも言えたが、それでも、彼等の気持ちを推し量って、言葉を選んだ。
憎むべき相手だと思っていたのが、真実は何とも言い難いもので……二人は何も言えなくなってしまう。
頭の中では、先生が消えた理由を認識しているのだろうが、心の中が、納得していないのだろう。
二人が押し黙ってしまって、虚しそうにしているのは心が痛むと、
「……けれど、そこまで悲観しなくても良いと思う」
「……えっ?」
「……なんでだよ」
「それはね……あいつが、自分で選択肢を選んだから何だ」
二人を慰めようとしている。




