異世界のアフレクションネクロマンサー510
『ボコッ…ポコ……ポコポコ……ポコポコポコポコ』
「そろそろだな」
オレンジの液体が満たされた噴水から、泡が出始める。
それは人間が、息を吹き返した合図。
「待ってたぜ、お前の事を」
ドラゴンと人間の呪縛から解き放たれた二人。
今の二人は、この世界の最高峰の存在。
少し卑しい言い方をすれば、最も神に近い存在。
本当なら、ドラゴンと人間という関係に呪われて、どちらか一方が運命を背負って戦うはずだったが、運命は変わった。
「これからは一蓮托生だな」
泡を吐く噴水に手を伸ばして、アイツが出て来るのを待つのであった。
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「そろそろ、みんな来るかな」
「来るだろうな…爆撃は終わったしな」
先生と別れを告げた二人は、大通りに座り込んでいた。
「先生は勝ったのかな」
「勝ったさ…これからどうしようか、考えているんじゃねぇか」
街から天に昇った『何か』とドラゴン、それを皮切りに爆撃が行われた。
仲間達は低空飛行で、こちらの姿を確認してくれたのか、自分達の近くには一切爆撃を行わないでくれた。
残された二人は、先生の所には行こうとしない。
あれからどうなったか、気にならないと言えば嘘になるが、
「俺達には、俺達の世界があるか……」
金輪際会えないとしても「さよなら」を伝えのだ、見送ったのだ。
残された二人は空を見上げ、自分達の世界の時が進むのを待っていると、
『ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……』
風が吹くような、音が耳に聞こえた。
ぼんやりとしていた二人には、その風が吹く音が鮮明に聞こえて、何気無く、何も考えずに、風が吹く音の方に視線を動かすと、
「なに?」
「なんだ?」
自分達の方に、見た事も無い鎧を着た……
「ドラゴン?」
ドラゴンが、自分達の前に降り立ってくる。
「テメェは……」
鎧を着たドラゴンではあるが、中の方の姿には見覚えがある。
それはあの時、崩壊した建物の端に座っていたドラゴン。
「何しに来やがった」
呼んでもいない来訪者に、目を吊り上げて警戒するが、
「待って…先生は……?」
「あっ……」
ここにドラゴンが来たという事は……
その事実に、二人は青冷めた表情で、ドラゴンを見つめると、
「待つんだ、話を聞くんだ。君達が思っている答えとは違う」
ドラゴンは、こちらに手の平をかざして、落ち着くように諭すのであった。




