異世界のアフレクションネクロマンサー505
呆然と立ち尽くし、自分が見ている世界を信じられずに見ている。
ここが、どこなのかは分かる。
人間達が住んでいた瓦解した街。
自分と人間が争い、辿り着いた場所。
見覚えがあるも何も無い、さっきまでここにいた場所なのだから、覚えていて当然なのだ……なのに、それでも呆然と立ち尽くすのは、
「……なんでだ?」
今の自分で、今の命が、もう二度見るはずの無い世界であったから。
死の淵で目を閉じた時から、命の終わりを受け入れた。
肉体が滅び、命だけが剥き出しになり、今の自分の終焉を認め……ただ、誰かの命の欠片にはならずに、もう一度自分として生まれようと画策はしたものの、今の自分が、この世界を見る事になると思は思っておらず……
『カロン……』
「あっ……」
口の中で転がった甘みに『はっ』と口を押さえる。
夢のような世界で貰った、赤い飴玉。
それは何かの抽象的な、イメージ的な物では無く、
「現実のモノだったのか」
この世界に実在するモノだった。
口の中で甘く、甘く平尾がる赤い飴玉は、体の芯から感じていた意味を癒し、生きる活力を与えてくれる。
崩壊寸前までいっていた体が、命が蘇り……
「…………っ!?」
命が蘇りつつある時に思い出した、この赤い飴玉をくれたのが人間であったことを。
ぼやけていた視界が、頭が元に戻り、人間の遺体の方を振り返ると、赤い血が垂れている。
人間の体から、幾つもの鮮血の血が地面を辿り、鮮血の血が線となって伸びて、自分を囲むように、紋章が出来上がっていて……特に、自分が倒れていた口元には、血だまりが出来ていた。
「人間!!意識があるのか!!」
それが何を意味しているかは、一瞬で理解する。
それは人間が、命の欠片を自分に与えてくれたのだ。
力の抜けていた足で、大地を蹴り飛ばすと人間に駆け寄り、
「おいっ!!俺と一緒に生まれ変わる約束だろ!!」
地面に伏せている人間を、自分の胸元に抱き寄せる。




