異世界のアフレクションネクロマンサー500
「ごほっ!?」
体が欠損していない事に一安心して、胸を撫で下ろしたのが良くなかった。
胸を撫で下ろせば、内臓を圧迫するのは必然。
体の中が痛いと分かっているのに、そんな事をすれば、
「ごほっ!!ごごほっ!?」
口の中が、湖のような血溜まりになってしまう。
喉を登り、口の中に溜まる血を吐き出す為に、体が痛いのを堪えながら、仰向けからうつ伏せになると、
「げほっ!!げほっ!?」
喉を鳴らすようにして、血を吐き出すと、地面に血が飛び散る。
(死ねねぇよな…じゃなかったら……)
まだ生きている証拠を、地面に吐き出しながら、横目に……
(お前に…申し訳が立たねぇよ……)
横目に映る、ボロボロに半壊した鎧を身に纏ったまま、目を閉じて息絶えている『人間』を見つめる。
「ごっ…ごほっ……」
あらかた、体から血を吐き出すと、体から力が抜けて地面に腹這いになる。
(……意外と、不味いか)
少し…視界が歪む。
(まだ…ダメだ……)
このままでは、自分の命も危ない。
(…考え……るんだ)
何とか意識を保つ為にも、何をしたのか、何があったのかを思い出す。
白い雲の運河から落ちて、ボロボロの体で地面に激突すれば、間違い無く死ぬ運命だった。
何かしないと、何とかしないと……どうにかする術を考えていた時、
「お前が…いて……良かった……」
自分が握り締めている人間に気付いた。
ドラゴンの誇りを思い出し、巨躯を誇るドラゴンの姿に戻ったが、
「お前も…ドラゴン……だもんな……」
『人間』をモデルにしていても、手のひらに収まる小さなサイズでも、ドラゴンはドラゴンなのだ。
確証等は無かったが、それでも賭けた。
人間を手放して、自分に集中する。
ドラゴンでありながら人間の姿。
巨躯を誇るドラゴンに比べれば、小さな人間の体は非力だが……
「非力じゃなぇよな……」
ダウンサイズする事で、肉体の治癒を狙ったのだ。
ドラゴンの体から、人間を模倣した姿になっていくと、砕かれた胸の痛みが少しづつ引いていく。
ボロボロにされた羽も、四枚から二枚に戻ることで、左側の羽は二枚ともズタズタにされたせいで、元の一枚に戻ってもズタズタだったが、右側の羽は一枚だけ無事だったお陰で、まばらに穴が空いた羽に戻った。
人間を模倣したドラゴンになると、完治した姿では無かったが、それでもボロボロの巨躯を誇るドラゴンの姿の時よりもマシになり、
「良いもんだろ…ドラゴンの体は……」
受けた傷が幾分マシになった、人間を模倣したドラゴンの体なら、何とかなると信じた。




