異世界のアフレクションネクロマンサー499
ドラゴンの握り締める力で、ノズルがひしゃげる。
人間にとっての羽が、握り潰される。
このままでは、二人して地上に墜ちる。
残された右側の二枚の羽で何とかバランスを保ちながら、落下しようとするが、
『グゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンンンンンンンン!!!!!!』
『ブチブチブチブチブチブチ!!!!』
人間は、右腕を左方向に付き出して、右側の羽の一枚を撃ち抜くと、四枚の羽のうちの、三枚がボロ切れの布となってしまう。
『ガァァァァァァァァァァァァ!!!!!!』
「あぁあぁぁぁあぁぁ!!!!!!」
互いに空を飛ぶ術を無くし、真っ逆さまに地上へと帰って行く。
白い雲の運河に顔から沈むと、視界一杯に広がる白い雲が、横目に流れる。
掴む物も無ければ、魚一匹いない白い運河を沈んでいき、
『ボッヒュゥゥゥゥゥ!!!!!!』
そのまま白い運河の底を突き抜けると、見慣れた世界……自分達の世界に帰って来た。
緑の木々が広がり、湖が広がり、人が造った街が広がり……
『ガァァァァァァァァァァァァ!!!!!!』
「あぁあぁぁぁあぁぁ!!!!!!」
叫び声を上げたまま、二人は地上へと帰って行く。
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「うっ…うぅっ……」
呻き声が聞こえる。
まるで、夢から目を覚ましたかのように、気怠そうに声を上げる。
「あっ…いつつ……」
体中が痛い。
まるで、高い所から落ちたかのように……
「いや…落ちたんだ……」
記憶が飛んでいる。
人間とドラゴン、互いに空を飛ぶ術を無くして、一緒に地上へと帰って来た。
「どこまでだ……」
地上に墜ちた自分の体が、どうなったのかを確認する。
両腕を伸ばし、両の手を開き、指の先まであるのかを確認し、
「手は大丈夫なのか……」
無事だった手で、胸を撫で下ろしながら腹を触り、腰に手を回すと、
「ここもか……」
胴体も無事で、
「後は……」
ふくらはぎに力を入れると筋肉が膨らみ、ふくらはぎまで無事だと分かると、今度は足先に集中して、指が動くのを感じると、
「なんとかか……」
体中に痛みが走るが、それでも体が欠損していない事に胸を撫で下ろした。




