異世界のアフレクションネクロマンサー496
撃たれた二発のミサイルが、ドラゴンに届く事無く爆発すると、オレンジ色の濃い煙幕が立ち込める。
しかし、たかが煙幕では、空間の歪みに耐えられる訳も無く、数秒しか持たないだろうが、
『ギャァァァァッゥゥゥゥゥゥゥゥンンンン!!!!!!!!!!』
ドラゴンは、煙幕を消すよりも、人間が逃げ出せないように空間の歪みを広げる。
スープ皿にスープを満たすように、広い青い空を歪める。
煙幕を利用して逃げようとも、これだけ空間の歪みが広がっては逃げる事は出来ない。
青い空には、隠れる岩も木も無ければ、逃げ込む穴も無い。
『ウゥゥゥゥゥゥンンンンンンン…………』
確実に人間を殺す為に、放たれた空間の歪みが、次第に落ち着いく。
レンズを逆さまにしたかのように歪んでいた景色も、焦点があって来たかのように景色が戻る。
捻じ曲がった空間戻り、少しだけ立ち込めた煙幕もプラズマで焼かれ、青い空に残されたのは、
『グルゥゥゥゥゥゥ…………』
ドラゴンだけであった。
大きな目を見開き、長い首を左右に振って、青い空に人間がいない事を確認する。
青い空を目に通し、目を通った青い空を脳が理解する……人間はいないと。
それが意味する事は何なのか?
その答えは簡単だ、人間は死んだのだ。
プラズマに焼かれながら、空間の歪みに巻き込まれて捻じれて、その身を……
『グゥォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!』
勝利を手にしたドラゴンが咆哮を上げる。
『ウゥォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!』
青い空に勝利の咆哮を…神の世界で、誰が生き残ったかを誇示……
『ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!』
と言うには、少し様子がおかしかった。
もしも勝利を手にして咆哮を上げているというのなら、勝った喜びに打ちひしがれて、手を握り、堪らず首を上げ、自分が勝利っした瞬間を思い出す為に目をつぶりながら、咆哮を上げただろうが、
『ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!』
実際は、周囲を警戒するように辺りを見渡す。
この青い空から人間が消えたのは見て確認している、間違い無く消えたのだ。
この世界から消えたという事は、この世から消えたという事……それなのに、
『グゥォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!!!』
消えた人間に威嚇するように、咆哮を上げ続ける。




