異世界のアフレクションネクロマンサー490
蒼い空、雲の運河を横目に、自分がいるべき世界へと還されるが、それは必然的な話だったのかもしれない。
我々『ドラゴン』はあくまでも、地上の世界を、地上の空を支配するのを許された優等種だが、この神の領域にいる事を許された種ではない。
分不相応な者は、蒼い空を横目に、雲の運河へと堕ちていく。
雲の運河に沈めば、自分が元のいた世界に還る。
(…………)
蒼い空と雲の運河しかない神の世界だが、それでも目が勝手に動く、自分が死んで欠片となり、次の者に繋がる様にと、目が動く。
この世界を見て、知る事は次の者に繋がる。
体が糧となり、心が欠片となり、新たな命が息吹く…決して悲しむ事は無い……出来るだけ力強い欠片になる為にも…知る事を……知る事を………知る…事…を…………
蒼い空から堕ちて、雲の運河へと沈むその時、最後にあいつの姿を『人間』でありながら『ドラゴン』であるあいつが見えて……
『ドックン!!!!』
胸が高鳴る。
(…………)
『人間』でありながら『ドラゴン』であるあいつ。
それは自分の中の知的な欲求を満たしてくれる、良い奴であった。
(お…れは……)
人間は面白い生き物だ。
考える事、知識を蓄える事。
手で触れて、物を組み合わせて創り、目で見て、形に意味を創る。
それらは自分の器を広げ、可能性を見出す力に……
「……ドラ…ゴン」
力になったが、果たしてそれが本当に正しい答えだったのだろうか?
「おまえを…みと…める……」
人間の創造する力は魅力的で、間違い無く自分を一歩も二歩も先のステージに導いてくれるが、
「けどな…おれ…は……にんげんに…なりてぇんじゃねぇ……!!」
望んでいたのは、人間になる事ではない。
「おれ…は…おれは……!!!!」
人の形なって、本に目を通して読書をしたかったのではない、彫刻刀を持って木を削って芸術品を作りたかったのではない、声を出して愛の歌を歌いたかったのではない……本当に望んでいた事は、
「俺はドラゴンダァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
人間の力を手にして、人間の力を内包して、種の頂点となるドラゴンになる事。




