黒い海21
今回は二層目に続くそこは地獄の底には繋がってはいない、礼人は二層目に続く所に溜まる霊達を手で払い、
(行くか…)
黒い海のさらに深い所を目指す。
二層目までの道のりも一層目と同じように周囲を警戒しながら落りたが、一層目と同じく黒い海が嘆きながら、礼人に救いを求めるだけで探している者はいない。
二層目に辿り着くと、一層目と同じように歩いて次の階層に繫がる場所を探さなければならないが、次の三層目になると更に霊度も高まり、礼人のコンディションも装備も整えて来なければならない可能性が出てくるが、
(戻る時間も無いけど……んっ?)
礼人の霊感に訴えるものを感じる。
それは一般人でいう所の、肌に冷気が触れて冷たく感じ、小さい虫がうぶ毛に触れたかのようなこそばゆい感覚。
この何ともいえない感覚を感じた瞬間、礼人は動きを止めた。
礼人は経文で身を守っている。
礼人個人の力でも、この黒い海を潜行することも可能だが、経文があるお陰でなお安全に潜行することが出来る。
そんな状態の、潜水服を着ている程の強度があるのに肌に感じる悪寒。
礼人は悪寒に導かれるように進むと、そこには霊達が密集する地点があった。
密集する霊達を草木を払うようにしてどかすと、次に繫がる所に顔近付け、
(そういう状況か!!)
次の階層に続く場所に探していた者を見付けた。
亡者が集うこの場所、長い月日の中で正体を無くして混ざり合ってこの黒い海になるのだが、まだ形を保った魂がいる。
それは黒く淀んでしまった他とは違う、命の輝きが見える魂。
本来、魂は穢れが少なければ天国で時に任せて浄化され、穢れた魂は地獄で洗われながら浄化を待つ。
浄化された魂は、新たな魂の欠片となって再び肉体に宿り、新たな命として生を紡ぐ。
これについては、前世の記憶を授かった者から確認しているので間違いはなく、さらに前世の記憶を持つ人からの話で分かったのだが、天国に行けるような人は聖人から普通の人、それ以外は地獄に落ちるのだが、天国に行った者は特に問題無いのだが、問題は地獄に堕ちた魂だ。
地獄に堕ちた魂は、穢れを浄化するために苦悶の時間を過ごすことになるのだが、例えば殺生、これは無駄に命を弄んだ者が辿り着く所で、通説では1兆6653億1250万年の時間を浄化に掛けないといけないとされているが、それは少し違うらしく。
実際には、前世の罪の大きさによっては100年~500年ほどらしい。




