異世界のアフレクションネクロマンサー473
その何かは『ドラゴン』の何かではなく『人間』の何か。
身体的な能力ではなく、感情によって増幅した力。
恐れたあの目は、獣の目というよりは、人の目だった。
「……どうするか」
「どうするか」その言葉が二度も出る。
こちらも『ドラゴン』の体に慣れて来たとはいえ、相手の『人間』に対する理解は、こちらを凌駕している。
「……まいったな」
そして今度は、悩んで出て来る「どうするか」の代わりに、困り果てた時に出て来る「まいったな」が出て来てしまう。
この穏やかな空間で、ドラゴンの体に慣れるという手もあるかもしれないが、ドラゴンが私をオレンジの液体に沈めたのは、溶けて液体となると思ったからこそで、私の亡骸を丁重に葬る為ではない。
オレンジの液体に溶けた私を吸収する事で、力を得ようとしているのだ。
長い時間、私がオレンジの液体に溶けなければ嫌でも、異変に気付くはず、そうなれば……
「あのオレンジの紋章がなぁ……」
オレンジの紋章を体に浮かべて、この世界に干渉してくるだろうし、
「まいったなぁ……」
そもそもの話、あのオレンジの紋章がまずい。
この世界に生まれる時、ドラゴンの突きを躱せたのは、あの異常な力を感じたからこそ、危険な力を避けて反対側へと孵った。
あのオレンジの紋章が浮かび上がっている時に、爪を立てられていたら、
「多分、溶かされて死んでただろうな」
内側から、ドロドロに溶かされて死んでいた。
しかし、その話をすると、何故ドラゴンは最初からオレンジの紋章を浮かび上がらせて、本気を出さなかったという疑問が浮かんでしまうが、それは少し違った考えで、ドラゴンは間違い無く、終始本気を出して戦っていた。
最初のオレンジを浮かび上がらせたのは、あくまでも卵から化け物が生まれると思ったからこそ、何も考えずに始末しようとした。
だが、実際に卵の中から生まれたのは『人間』
自分が理解をしたいと思った『人間』で『ドラゴン』の肉体を持つ稀有な存在。
『ドラゴン』で『人間』の肉体を持つ自分とは真逆な存在であるが、どの存在よりも近しい存在。
だからこそ、本気で戦いたくなったのだ……同じ目線で、同じ力で。




