異世界のアフレクションネクロマンサー470
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「こうなったら『人間』の力も何も無いか」
どんなに言葉を交わし、どんなに拮抗した戦いをしていても、いつかは終わりが来る。
人間は良くやったと思う……あの見えるはずの無い存在がいなければ、羽を折られて地面に転がっていた。
そうなれば、人間にも少しは勝ちの目が合ったのかもしれないが……
『ドチュッ!!』
「げふっ!?」
現実はこれだ。
この人間から『人間』を学びたいというのは嘘では無いが、それは仲良く席に着いて、語り合う事では無い。
命を削り、生を奪い合う事でこそ、人間は極限の中での試行錯誤をし、その結果、人間の極限に引っ張られて、あの見えるはずの無い者が見えた。
まだ完全には『人間』を理解しきれていない、あの見えるはずの無い存在も『人間』の片鱗に過ぎず、まだ学べることは多くあるのかもしれない。
それに、自分と戦える人間等、この世にどれ程いるのだろうか?
まるで、極上な肉を口にして、その甘く蕩ける様な味に舌鼓を打ちながらも、この味わい深い物が二度と味わえないのではという気持ちが広がると、
「実に惜しいものだ……」
『ドッチュ!!ドッチュ!!ドッチュ!!』
「がっ!!…がはぁ!?……っ…………」
純粋な気持ちが漏れるが、それでも手が止まる事は無い。
繰り返される突きに、人間は抵抗も出来ずに足も腕もダランと垂らし、
「…けっ……」
肺から漏れた空気に押し出されて、口を濡らしながら赤い血が垂れて来ると、人間の重みが、突き刺した手から感じる。
「尽きたか……」
体を支えていた筋肉から力が無くなり、吊るされた肉となる。
先程まで、この世界を見て、最期まで抗って輝いていた瞳が、ただのガラス玉のように光を反射している。
生命の輝きが消えた。
「……真っ赤だな」
執拗なまでに、人間の命尽きるまで突き刺した手が赤くに染まっている。
「…………」
決着が付いた……それ以上の事は考える事は無い。
「最後に貰うぞ……」
今まで輝いていた時間のせいで、これからしようとする事すらも億劫に感じるが、
「勝者の権利だ」
死んだ人間の亡骸を肩に担ぐと、その場を後にする。




