異世界のアフレクションネクロマンサー469
そんなのは予測出来無い。
そのままのスピードで来れば羽の付け根の骨を折り、加速して距離を詰めて来たなら翼膜を裂く。
万が一、気後れして減速をしたら……その万が一は考えていなかった。
『人間』を理解しよとしながらも、殺せるタイミングがあれば殺すという、ドラゴンのスタンスを感じたからこその、万が一を考えずに精神を統一しての一撃を放ったのに……
『ドゴンッ!!』
「ぐへぇ!?」
肩を蹴り飛ばしただけでは、ドラゴンの姿勢を崩すだけで致命傷にはならず、それ所か宙返りしての蹴りを入れた事で、飛行体勢が崩れてしまい、身動きが取れなくなった所で、懐に飛び込まれてそのまま壁に激突させられる。
「かはっ!!」
体が吹き飛んだ衝撃で、意識が体のどこかに落ちた。
視界は目の前にあるのに、意識が体のどこかに落ちたせいで動けない。
足先?手先?腹?背中?胸?喉?どこに落ちてしまったというのか。
行方不明になった意識を求めて、体中がバラバラに蠢く。
まるでパン生地を捏ねるように指先と足先がクネクネと動き、腕と足が赤ちゃんが運動するかのようにビクンビクンと弾けて動き、寝苦しい夜のように身体が捻じれる。
いなくなった意識を探して、体がバラバラに動き、まともに身動きが出来無い状況なのに、
「ここから、まだ何とか出来るのか『人間』は?」
『ドッス!!』
「ゴホッ!?」
ドラゴンは容赦する事無く爪を立てて、こちらの腹を貫いた。
「がっ…がっ……がはぁ……」
行方不明になっていた意識が、腹の痛みによって頭に帰って来るが遅かった。
腹に走る痛みは致命傷。
ドラゴンの爪が、腹を掠めたのではない、突き刺さっているのだ。
ドラゴンの爪をつたって、真っ赤な血液が地に落ちる。
ポタポタと降り始めた雨のように、点々と地を赤く染めて……
「まだ……」
致命傷ではあるが、即死では無い。
『人間』ならこの時点で終わってるかもしれないが、体は『ドラゴン』なのだ。
強靭な肉体には、命が尽きるまでのタイムリミットが十分に残されている。
こちらも負けじと、右腕を引いてドラゴンの首を狙うが、
「それは『人間』の力では無いな」
『ドチュッ!!』
「ぐふっ!?」
腹から引き抜かれたドラゴンの爪が、もう一度突き立てられて、腹がグチュグチュにされてしまう。




