異世界のアフレクションネクロマンサー466
「ふふっ、街の中を飛んだ事は無いが…子供の時に飛んだ、森の中よりは飛びやすいな」
「……っ!?」
それは想定外の言葉だった。
ドラゴンの巨大な体躯、鋼鉄のように硬い鱗、獣を一撃で屠る力は、その気になれば木々をなぎ倒す。
獲物が森の中に逃げ込もうとも、弱者を守るように立ちはだかる木々をへし折り、木々から飛び出す槍のような枝も、ドラゴンからすればつららのように脆い針。
一々、木々を縫うような飛び方をした等無いから、裏道の細さに苦戦するかと予想していたが、
「こういうのを童心に帰ると言うのか?」
その予想に反して、ドラゴンは初めての裏道を飛ぶという事を楽しんでいて、そこには……
(まずい……)
『人』のように過去を楽しむ心を…心を理解しようとしている。
他の生き物には心が無いという訳では無いが、幾数多の生物の中から人間が秀でた生き物になれたのは、感情が豊かだからだ。
自分の心の中にある物を表現したいから、鳴き声が歌になり言葉となり、心にある物を形にする為に土に絵を描き文字となり、心を表現したいという願いが文明を生んだのだ。
ドラゴンは、まだ心を完全には理解していないが、
(殺らなければ!!)
過去を思い返すというのは、まさに心の成長の証……その僅かな兆しが、大きな輝きとなる前に……
『ヒュ……』
「さて追い付くぞ!!」
『ヒュッ!!』
『ダダッ!!』
「なに!?」
「潰れろ!!」
このドラゴンを潰さないといけない。
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子供の時に飛んだ森の中とは違うが、それでもここは森の中より開けている。
視界を塞がれる森の中に比べれば、今の小さい体の感覚に気を付ければ雑作も無いが、
(森の中を飛んだか……)
前を飛ぶ人間が、何故かドラゴンの影が見える。
それは人間が、ドラゴンの姿をしているからでは無く、
(何でいるんだ……)
小さい頃、一緒に森の中で飛んだ、もう一人の小さいドラゴンの姿が浮かび上がる。




