異世界のアフレクションネクロマンサー465
(さて…どうする……)
建物の裏道を駆け抜けながら、気になる事を考える。
ドラゴンは間違い無く、私を殺しに来てはいるが、それと同時に『人間』に強い興味を示している。
声を掛ける行為、これ見よがしろに羽の動きを見せる行動……『ドラゴン』の体を上手く扱えない、私に対しての当て付けのようにも思えるが、それならとっくの昔に殺しているはず。
殺そうとはしているが、殺せない。
生かそうとはしていないが、生している。
(油断はしない方が良い……)
ここで自分に価値があると値札を付けたら、その場で殺される。
私は死んでも良いが、利用価値があるというのが実際の所で、
(余程、美味しそうに見えるのか……)
上空を飛んでいるドラゴンが、舌なめずりをしているのが見える。
条件は一緒…『人間』と『ドラゴン』のアドバンテージが崩れない限りは、不利有利は無いと思っているが、
「どうした?顔色が悪いぞ?」
余裕を見せ付けるドラゴンに対して、焦燥感に悩まされる私がここにいる。
「確かにそこは飛びにくいが、飛べない訳では無いぞ」
ドラゴンは、私の焦りを察したかのように、空から建物の隙間に潜り込み、
「言っただろ、今度は付き合ってやると」
大空の覇者が、路地裏という狭い世界へと降り立って、追い掛けっこを始める。
羽を使っての路地裏の逃走、羽を使っての追走。
条件の良さは、路地裏を走って遊んだ経験が手伝ってくれる『人間』の方に分が上がるが、
「これは中々…おもしろいな」
それで差が開く事は無く、辛うじてイーブンに持ち込んでいる状態。
「もう少し飛んだら、お前の背中に手が届きそうだ」
ドラゴンはこの狭く、ルートを決められている中での飛行を楽しんでいる。
「「もう少し」は言い過ぎだな!!」
こちらは必死になって『ドラゴン』の体に慣れながら、
『バサッ…』
『ヒュ!!』
(そうやって飛ぶのか!!)
ドラゴンの動きを覚える。
直線での追い掛けっこは、距離がそんなに縮まらないが、曲がり角で距離が縮む。
直線の時はお互いに羽を強く羽ばたかせて進むが、
『ヒュ……』
『ヒュ!!』
曲がり角では、尻尾を振った勢いで曲がり角を曲がる。




