異世界のアフレクションネクロマンサー464
羽を力強く羽ばたかせる際、少し羽に角度を付けて風の抵抗を受けてから、向かう方向に羽を水平にする……それを親が子に教えるように、少し大げさに「見える」ようにすると、まだ甘い部分があるとはいえ、人間は一発で物にする。
体の中に溶けたドラゴンの知識があるから?
それもあるだろうが、もう一つの何かがある。
ドラゴンと言えど子供の時は、大きな岩のてっぺんから何度も飛び降りて、羽の使い方を、風の受け方を覚える。
何度、地面に激突しても、岩のてっぺんに登っては、それを繰り返す。
そうして、やっとの思いで羽の使い方を覚え、それから空で飛ぶ事を覚えるというのに……『人間』はその工程を簡単に越えてみせて……
(欲しい…)
自分の中で疼く欲望。
それは腹が減った時に、血の滴る甘い肉を頬張って、腹を満たしたという欲望に近い物。
(それも…欲しい……)
人間の体を手にしたが、それはあくまでも種の『可能性』を広げる物で、一番に喜ばしい事だったのは『知識』を手に入れた事。
単なる『ドラゴン』のままだったら、こうして不思議な成長をする『人間』をただの獲物としか見る事しか出来ず、それを自分達の力にしたいと願わなかった。
少し撫でれば死ぬような劣等種に憧れる事等一切無い、興味を持つ事も無かったのだが……
「私の欲望を、満たしてくれよ」
眼下にいる『知識』を刺激してくれる『人間』に、堪らず舌なめずりをして唇を濡らす。
_______
自分の上を飛ぶドラゴン。
行き場を無くして自ら下に降りたのでは無い、下に降りれば崩壊した建物があり、そこには路地裏がある。
大空というステージでは、ドラゴンの方に分があるというのは、種族の差から簡単に判断が出来る。
大空を優雅に、いかなる生命を聖域から払い除けて来たドラゴン。
他の生き物達には、地上という世界で細々と生きる事を強いて来たが、
「空がドラゴンの聖域なら…地上は人間の聖域だ……」
建物の乱立する地上は、人間の住処。
路地裏を駆け抜けるというのは、ドラゴンはした事が無い。




