異世界のアフレクションネクロマンサー462
命懸けの状態なのだから、無様でも手足をバタつかせて反撃するか、不格好でも手足を忙しく動かして逃げ出したりはするだろうが、
(羽を使ったのか……)
咄嗟の状況なのに「人間」なのに「ドラゴン」の羽を選んだのが解せない。
奴はまだ「人間」と「ドラゴン」では、「人間」のアドバンテージの方が高いのだから「人間」として最善の方法を選ぶのが道理のはずなのに、
(何をした?)
人間は何かをして、アドバンテージのある「人間」よりも、不慣れな「ドラゴン」の方が良いと選んだ事になる。
それは、さっきの力を否定した「力」とは違う何か……
「……良いだろう…今度はそっちに付き合おうじゃないか」
まだ知るべき事があるというのなら、学習するだけ。
あえて敵の懐に入り込むのも、悪く無い。
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「これが…ドラゴンの力……」
私の体の中にある記憶は、助走をつけて空を飛ぶ記憶がある。
『グルングルン』とエンジンが猫のように鳴き、プロペラが『ブルルル』っと風を切る音が聞こえて、初めて空へと旅立つ事が出来るのに、ドラゴンの羽は力強く一回羽ばたけば空へと上がれ、
『バサッ…バサッ…バサッ…バサッ…』
『グルングルン』とエンジンが猫のように鳴き、プロペラが『ブルルル』っと風を切る音が聞こえて、初めて空に居続けられるのに、ドラゴンは一拍置きながら羽を羽ばたかせるだけで、空に居れる。
「これが…生まれ持っての力……」
そこには制約の無い、自由がある。
全ての種の頂点に立つ事が許されるだけの力がある。
羽を羽ばたかせながら、ドラゴンの圧倒的な力を身に染みさせていると、
「今度は、こっちが付き合ってやる」
地上からドラゴンが、飛び上がって来る。
一気に、こっちへと距離を詰めて来るドラゴン。
それに対してこっちは、
「それはどうかな!!」
『バッッサァァァァァ!!!!!!!!』
羽を羽ばたかせて、ドラゴンから距離を取る。
建物よりも少し高い空中で、ドラゴンと人間の追い掛けっこが始まる。
『バッッサァァァァァ!!!!!!!!』
『バッッサァァァァァ!!!!!!!!』
人間が前に出て、ドラゴンが後ろから追い掛ける。
同じ力強さで羽ばたき、付かず離れずの距離を保ちながら。




