異世界のアフレクションネクロマンサー461
敵を叩きのめすとは違う「力」
もしもあの時に、人間の方がドラゴンの力を掌握していたら、
(殺されていた)
隙を見せた自分の方が殺されていたが、結果は生き残った。
生き残ったからこそ、手にした力がある。
人間がドラゴンの力を掌握する前に、こちらの手にした力を試す。
大振りな攻撃は、やはり人間に避けられたが、それは想定内。
「これは避けられるか!!」
「何を!?」
言葉を交えたのは、ちょっとした煙幕。
「言葉」という魔法、やられた側からすると分かるが、あれはズルい。
どんなに平静を装って、惑わされまいとしても、その時点で思考が回るのだ。
思考が回れば、それが正しかろうと間違っていようと集中力が欠ける。
だからこそ人間は漫然と、大振りな右蹴りの攻撃に対して正解である防御し、そこで満足した。
正解を出して、相手から間違いを引き出した……その心の余裕が、その後の尻尾を使った叩きに対応出来無かったのだ。
尻尾に叩かれて体が傾いた人間は、完全に死の方向を見ていた。
それは争っている時に決してやってはいけない、視線を逸らすという行為。
視線を逸らせば、相手がこれからする動きを見定める事が出来なくなる。
手を出すのか、足を出すのか……見えなければ、どうやって逃げれば良いのか判断が付かなくなる。
(首を貰うぞ!!)
人間が横を向いて、体を横に傾けて……一撃で仕留められる場所を、致命傷になる所を狙う。
今度は、声を出さない。
何故なら本命の一撃だから。
これは相手を嵌める為の、見せる手札では無い、これは相手を仕留める為の切り札。
バランスを崩し、その辺りにいれば、どんなに動こうとも仕留められるという状況で、
『バッッサァァァァァ!!!!!!!!』
見えてもいないのに、最善の手である羽を使って上空に飛び上がるという選択を、人間はしてみせた。




