異世界のアフレクションネクロマンサー460
(うっ……)
視界が飛ぶ。
殴られた衝撃で、私の意志とは関係の無く、視界が明後日の方向を映すが、そこには未来は無い。
(ま…ずい……)
命懸けの戦いをしている時に、よそ見をするなんて自殺行為。
ドラゴンのから見たら、私の首は横を見ていて隙だらけ。
どれだけ大振りな攻撃をした所で、避けれる事は無い。
(やられ…る……)
死ぬイメージが浮かぶ。
爪を立てたドラゴンが私の首を狙うイメージ。
命に直結する首。
そこには首を守る為の骨は無く、強靭な筋肉があると言えど、ドラゴンからすれば柔い肉。
鋭利な爪が首を貫く、その瞬間から喉が詰まって息がまともに吸えなくなり、苦しみに悶えれば、決着が付いたと爪を引き抜かれて命の鮮血が吹き出す。
「人間をまだ理解していない…良い参考になった」
「……!!」
ドラゴンからの死の宣告、これから私がイメージした通りに殺される。
新たに息吹いた命は、少しの時を過ごして終わりを告げ……
『バッッサァァァァァ!!!!!!!!』
「なにっ!?」
終わりを告げる気にはなれないと、羽が力強く羽ばたいた。
「くっ…!!」
一気に浮上する体、視界が広がる。
まるで…まるで……戦闘機が空へと上がる時のような、地上の重さを振り切る感覚に胸が躍る。
_______
(まだ…人間には隠された力がるのか……)
あの人間との最初の攻防で、ある事を得た。
それは自分の…自分達の力任せに戦う、野性的な戦い方は通用しないという事。
当たれば一撃で殺し、当たれば致命傷を与える攻撃は、野生の世界では正解だ。
獲物に逃げられないように一発で仕留め、縄張り争いならば、無用な長期戦で命を削る訳にはいかない。
だから、一つ一つが大振りで、力こそが正義であるのだが、それをあの突きを弾いた動きで全てが否定された。
人間の言葉に戸惑ったのは間違い無いが、それでも十分にみぞおちを貫く事が出来る突き。
これで早々に決着が付くと思ったが、人間が差し出すように伸ばした手に、腕を叩かれただけで突きは意味を成さなくなった。




