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アフレクションネクロマンサー 序章  作者: 歩道 進
黒い海
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黒い海19

嫌な思い出を過去に置き去りにしたとしても、それを思い出した時に苦しみで頭や心を悩ましてしまう。


年月が経っても強く残る苦しみ、それが怨霊達のエネルギー源になってしまう。


そして、死んだものというのはその瞬間なのだ。


例えば、ビルから飛び降りた人が地面に叩きつけられて死ぬ……そしたらそこまでなのだ。


そこで終わった者は、体を地面に打ちつけられた後にどうやってそれを過去の話にするかということだ。


人は嫌なこと、辛いことを時間が流れる間に様々な、友に相談したり遊びに出掛けたりすることで発散することで、過去に起きた嫌なことにすることが出来る。


だが、死んだ人間はそこまで……そこから先が無い。


死にたいと願ったその時の苦しみから、身を地面に打ちつけたその時まで……その時が永遠にループする。


決して発散出来ない苦痛に悩まされ、それが終わらないエネルギーとなって永遠に黒い海の中に漂う。


礼人の視界に入る歪む苦しみの海は、そういう人達の集合体。


互いの苦しみが混ざり合って永遠に尽きないエネルギーとなり、その結果、永遠に尽きない霊となってしまっている。


すぐにでも助けてあげたいという気持ちもあるが、今はそうはいかない。


(どこにいる?)


光が届かない黒い海の中を礼人自身が小さな光となって深く沈んでいく、闇夜の森の中でそこだけ輝くランプのように周囲をか細く照らしながら沈んでいく。


天から救いの蜘蛛の糸が降ろされた周囲の亡者は、必死に礼人に救いを求めて泣き声を上げるが、泣き声に耳を貸さずに白い瞳で黒い海を見渡し、


(いない……)


周囲は苦痛に歪む表情で満たされているだけ。


(もっと深い所にいる?)


礼人は黒い海をゆっくりと掻き分けて慎重に足元を見る。


しばらくの間、黒い海を注意深く見渡しては黒い海を掻き分けて落ちて行く行為を繰り返していたが、足が地面のように固い物に触れ、


(……底にまで来たのか)


搔き分けて進んだ先で、黒い海の底を踏みしめていた。

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