異世界のアフレクションネクロマンサー456
一度目の運命は越えた…あの子供達と自分が殺し合って相討ちになる未来は越えたが……それだけでは足りない。
それはあくまでも、自分が死ぬ運命が変わった程度の話。
湖に石を投げて、波紋が広がっていく様を、小さな事が大きなうねりになっていく事の例えとして使われるが、小石を投げた程度では、湖の広さに搔き消されて、何も無かったかのように静けさを取り戻す。
そう、自分が死なない未来に変わったというのは、その程度の話なのだ。
湖に津波を起こし、衝撃で底の地形を変えて、生態を変える衝撃にはならない。
このままでは、湖に投げ込まれた小石として、ひっそりと湖の底で眠るだけ。
「…再確認するが、お前は人間の味方なんだな」
「そうだ」
「それが何を意味しているのか……」
「分かっている。私達が争う事で、運命を変えたいんだろ」
どうやら全てを理解をして、納得して対峙をすると言う。
猫のように丸かった瞳が、互いに細くなる。
元より争うつもり、引き下がるという判断は無く、
「生まれたばかりの命と言えど、殺す」
「残念です。ここまで生き長らえた命を消すのは」
どちらもが自分が勝った未来を信じ、
「「死んで貰う」」
互いに羽を羽ばたかせると、一気に距離を詰めて接近戦を挑む。
まずは小手調べ。
互いに手にした力を、同等の力を持つであろう相手にぶつけ合う所からというのが、初手として相応しいのだが、
「うっ…!?」
「元が人間では戸惑うか」
羽を使っての移動、地から体を浮かせてのバランスが上手く取れず、体が宙で踊ってしまう。
「貰うぞ」
それに対してドラゴンの方は、流石の空を飛ぶエキスパート。
例え人型でも、その飛び方は非常に美しく、空を制しながら右手を引いて突き刺す動作を始める。
当てれば、ドラゴンの体を元にしていると言えど、簡単に突き刺す事が出来る。
ドラゴンの体に戸惑い、バランスを崩している人間に対して、初手から一撃を狙いに行く。
拮抗する力なら手合わせもしたが、こちらの方が有利というのなら遊ぶつもりは無い。
『バサンッ!!』
羽をもう一羽ばたきさせて、みぞおちを狙うと、
「みぞおち狙いか」
「何!?」
これから一撃で命を刈り取る攻撃を、慌てもせずに見極めているのであった。




