異世界のアフレクションネクロマンサー449
体が溶けていく…皮膚が溶けて…筋肉が溶けて…体の内側が溶けて……じっくりと鍋で肉を溶かすように蕩けていく。
骨が溶かされる…指先の一本一本を、喉元の骨を、頭蓋骨の裏側を丁寧に舐めて……飴玉を舐めるように骨が小さくなっていく。
しかし、そこには肉が溶かされる痛みも無ければ、骨を舐められる不快感も無い。
(体が解放されていく……)
命の解放、意識だけが取り出されて……
(静かだ……)
水面に漂う、木の葉になったような気分……
(ここなら…ここちよく……)
(………)
意識を閉じれば、このまま気持ちよく眠れる。
(みんな…ねむってる…の…だから……)
(…………)
ここには種族の争いなど無い。
ここに来た命は体を捨てて、種としての定めを忘れていく。
他の種族よりも繁栄し、同じ種族の中でも、自分の血を残し……
(あわれ………)
(…………)
ここにいる命になった者達は、そんな醜い事はしない。
体は殻……命を入れるケースが壊れないようにと、壊れたら死んでしまうと怯えて……
(かみさま……ありがとう……わたしは…………)
(…………)
くだらない種の争い、命が尽きる恐怖……生きている限り、襲い続ける恐怖から逃れて……
(ここは…てんごく………)
(…………)
全てが許されていく。
ここにいる理由は、もう思い出さなくて良い…
(もう…おわったんだ……)
(まけ…な…い……)
使命を忘れて……
(ねむろ…う……)
(まだ…だ……)
幸せな時へと……
(しず…もう……)
(うか…ぶ…うか…べ……)
命が辿り着きたい天国へと、後少しで行けるというのに、何かが反抗する。
(なぜ…?)
(おもい…させ……)
(そんなの…ひつ…ようない……)
抗う何かは、眠りを妨げる。
(たたか…うんだ……)
(おろか…な…)
争いの果てに何も無い、こうして命が還る場所を知った以上、それは愚かな行為。
(おまえも…いこう……てんごくへ……そうす…れば……わか…る……)
まだ、命の殻にこだわる者を、優しさを持って天国へと連れて行けば、己の過ちに気付くだろう。




